投稿日:2013年2月18日|カテゴリ:コラム

ロシア南部チェリャビンスクで15日朝、隕石が爆発・落下して1,200名もの負傷者を出した。また、数多くの建物が爆発時の衝撃波で損壊。被害は半径100kmにも及んだ。幸いにも隕石本体は人里離れた湖に落下した模様で、直撃された人や施設は無かった。
詳細は、これからの調査を待たなければならないが、この隕石の正体は直径約15mで、重量約7000tの小惑星であったと推定される。小惑星としては極小さい物だが、それでもこれが時速64,000km(音速の50倍)で大気圏に突入するとこんな大被害を招く。大気との衝突によって、高度70~30kmで3回爆発し、その際に2500度にも達する温度を発したと考えられる。
また、16日早朝には、直径45m、重量13万トンの小惑星「2012DA14」が地球に最接近して、気象衛星「ひまわり」の周回軌道である高度36,000kmよりも内側の高度約27,700kmを通過した。こちらも、幸いなことに月や人工衛星、国際宇宙ステーションなどには影響を与えることなく過ぎ去ってくれた。ロシアの隕石との関係は否定的だが、2012DA14が引き連れてきたごみである可能性も完全には否定できない。
今年は今予想できているものだけでも、3月10日にバンスターズ彗星「C/2011L4」が近日点を通過。11月28日にはISON彗星「C/2012S1」が近日点を通過し、月よりも明るいマイナス視等級の大彗星になるとみられており、世紀の天体ショーが目白押しだ。
願い事をする天体ショーだけで終わってくれればよいが、これらの小惑星が多数のごみを引き連れてくるならば、ロシアの隕石墜落のような事件が多発するかもしれない。そして、そのうちのひとつでもが人口密集地域に墜落したならば、これまでに人類が体験したことがない、それこそ未曾有の大惨事となることは間違いない。人口密集地域でなくとも、ダムなどに墜落したならば2次被害は想像を絶する。
私がもっとも危惧するのは原子力発電所付近に墜落することだ。東日本大震災に匹敵する、いやそれ以上の規模の原子力災害となる。

安倍自民党政権は経済優先でなし崩し的に原発再開を企んでいる。原状回復不可能な福島第一原発事故を目のあたりにしながら、なぜ彼らは国民に心配無用と言えるのだろうか。
「東日本クラスの地震は1000年に一度だから自分たちの責任を問われる間には再発するはずがない。」とたかを括っているのだろう。小惑星との衝突にしたって「そうそう起きるはずがないし、よしんば起きたとしてもそれが原発に直撃するなんて天文学的な確率だから心配する必要はない。」と考えているに違いない。
そう、確かに自然現象は天文学的な視点で考えなければならない。それでは、地球の歴史を天文学的視点で見直してみよう。現在の陸地はプレートに乗って何度も移動を繰り返してきた。それに伴って巨大地震は日常茶飯に起きてきた。これからも起きるだろう。なにせエベレスト山の頂上から貝の化石が採取されるのだから、東日本地震なんて可愛い物かもしれない。
隕石衝突だって珍しい出来事ではない。宇宙の歴史は衝突の繰り返しと言っても過言ではない。原子核レベルから銀河レベルまであらゆる次元での衝突が今の宇宙を作ってきた。地球も元を正せば宇宙星間物質の衝突の産物なのだ。地球は大小さまざまな星間物質の衝突によって大きくなってできた。最後の仕上げに、火星規模の原始惑星との大衝突に打ち勝ち、今の地球の姿になった。その際の爆発によって吹き上げられた破片が集まったのが月である。
現在では木星より内側には大きなごみは見かけなくなった。しかしそれより外側にはまだ沢山のごみが飛び交っている。特に海王星の外側にあるオールトの雲と呼ばれる領域には彗星の元が密集している。そしてより内側の軌道への侵入を今か今かと待っている。すなわち今後も天文学的な数の隕石や小惑星が地球に衝突することは必然なのだ。
そして原子炉。これもまた人間が作り出したにもかかわらず、いったん作られてしまったらその影響は数万年という天文学的時間単位で続くのである。 核分裂反応は、数10年の命しかない人間が責任を持てる範囲を超えている。
いったん作りだしてしまった核燃料は、それが自ら危険性を失う前に、必ずや何らかの自然災害の対象となる可能性が大きいということだ。浅はかな政治家が、これまで起こらなかったから、これから先も大丈夫だろうという思考過程で判断できる問題ではないのだ。
いったん開けてしまったパンドラの箱は元に戻せないかもしれない。しかし、これ以上、災いを大きくしないためにも早急に蓋を閉じるべきではないだろうか。

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