投稿日:2012年4月30日|カテゴリ:コラム

先日、全長6.5mのアミニシキヘビに飼い主の父親が噛み殺されるという恐ろしい事件があった。この事件に関連したコメントで知ったことだが、蛇の認知機能レベルでは、眼前にある物が食べられるものか食べられないものかの区別しかできないそうだ。飼い主がいくら愛してもその気持ちに応えることはできそうにもない。
さて、系統発生学的にみて神経系の一部が発達して、脳と呼ばれる臓器ができた時、まず最初に認識することはなんだろう。私は自分と自分以外の区別ではないかと考える。自分と自分を取り巻く環境と言い換えることもできる。
次に、その環境を、食べ物も含めて、自分に有利なものと、自己の存在にとって危険なものに区別するようになる。さらに、環境の識別は脳の発達に伴って細分化されていく。同種生物、生殖対象者、異種生物、食べられるもの、食べられないもの、自分より強いもの、自分より弱いもの、取り立てて騒ぎ立てる必要のないものなどなど。
一方、自己に所属すると認識するものも、拡大細分化されていく。狭義の自己、自己の支配する空間、配偶者、親、子、家族と。さらに生活形態の複雑化と生活圏の拡大に伴って、親類、同部族、同人種、国家と自分の所属する空間は拡大していく。
このように自己所属圏の拡大には必ず外界からの脅威がきっかけとなる。部族としての結束も他部族からの脅威を感じて、初めて成立したと思われる。朝廷を御旗に掲げて日本が一つに纏まったきっかけが黒船にあることは間違いないであろう。換言すれば外からの目にさらされないと、あるいは外から自己を眺めることができないと真の自己所属意識は育たないと言える。井の中の蛙は井戸の外に出て初めて自分が井戸の中にいたことを知る。
さて、今や我々は自分たちが半径6,356.752kmの地球という小さな惑星の上に生息していることを知っている。そしてこれまでニーケル・アームストロングを筆頭とする18名の宇宙飛行士を除けば、70億超の地球人は海抜100km以下の地球表面にへばりついて生きている。宇宙規模で考えた場合井戸にも遠く及ばない水たまりの中に生きる蛙のような存在であることも知っている。
がしかし、実際に地球の外に出たことがないために、地球人という自己所属感が醸成されない。そのために大航海時代と同じように水たまりの中で争いを繰り返し、処理方法も分からぬままに核物質を作り出して地球を「トイレのないマンション」化してしまっている。
どうしたら私たちは真の地球人意識を持てるのだろう。地球温暖化、環境破壊だと声高に叫んでも難しそうだ。やはりここは地球外生命体(ET)の登場しかないのではなかろうか。
地球外からの脅威を感じた時に、私たちは初めて、肌の色、宗教、国境を越えて、地球人として結束して立ち向かわなければならなくなる。その時に地球人としての自覚ができるのだと思う。いや、人類だけでなく地球上のすべての生命は同胞であり、我々は地球生命系の一部であるとして感じられるのではなかろうか。
願わくば、そこそこの強さのエイリアンの襲来があってほしい。

【当クリニック運営サイト内の掲載記事に関する著作権等、あらゆる法的権利を有効に保有しております。】