投稿日:2012年2月27日|カテゴリ:コラム

中国斉国の一人の娘に東西の二つの家から結婚の申し込みがあった。東の家は金持ちだが醜男で、西の家は貧しいが美男子だった。どちらに嫁ぎたいかとの母の問いに対してこの娘は「東の家で食事をして西の家で床に入る」と答えた。この故事から欲深い人がなるべく多くの利益を得ようと努めることを喩えて「東食西宿」と言う。

那覇市と海上自衛隊第5航空群が21日、23日に予定していた子ども向け雪遊びのイベントが中止された。雪は同航空群が青森県十和田市から搬送したが、沖縄県に自主避難している父母らから、「放射性物質が含まれているのでは」と懸念する声が相次いだためという。このイベントは2004年度から続く恒例行事で、雪に接する機会のない沖縄の子供たちに好評であった。
イベント用の雪は約630キロ。八戸航空基地の訓練に参加した隊員らが16日、十和田市内で集めてP3C哨戒機で運んだものだ。搬送時と到着時の2回、放射線量を計測した結果、過去の平常値と同じ水準だったという。
ところが、2月中旬ごろから、東日本大震災後に自主避難してきた人たちから、会場となる児童館や那覇市に対し中止を求める声が10件程度寄せられた。市は20日、児童館で説明会を開催。集まった約20人の父母らに対し、放射線量の測定結果を伝えて危険性はないとして開催への理解を求めた。
しかし、参加者が「雪に含まれた放射能が溶けて空気中に拡散するのではないか」「放射能汚染を避けるため沖縄に避難している。少しでも放射能が測定されているなら中止してほしい」などと強く要求した。これを受けて7年続いた雪のイベントが中止となった。このニュースを知って大げさでなく吐き気を感じた。
低線量の放射線被曝は地球上どこに行っても避けられないと考えるが、人生の選択は各人の裁量なのだから、彼らが沖縄まで避難することはとやかく言うまい。しかし、移住させていただいた新参者が長年地元の子供たちが楽しみにしてきたイベントを強引に止めさせるのはいかがなものか。得体のしれない雪ならばいざ知らず、原発から遠く離れた青森で採取されて安全が保障されている雪なのだ。それでも放射線が怖ければ、自分たちの子供だけ参加させなければ済むことではないか。
東食西宿、我執極まれり。他者を思いやる気持ちなど一欠片もない。こういう連中の頭の中は欲だけが膨れ上がっているので無知で頭が悪い。さらに自分が愚かであることも分からない。むしろインテリと自負している者の方が多いから厄介だ。そして、自省はせず、ひたすら他者の落ち度を理屈っぽく(へ理屈)あげつらう。
彼らの活躍の舞台は放射線障害に限られるわけではないはず。あらゆる場面でクレイマーとして名を馳せるだろうし、とんでもない訴訟を起こすこともある。いつからこんな醜い日本人が増えてしまったのだろう。
でも、嘆いてばかりいる必要はなさそうだ。被災地に診療所を開設した医師がいる。なけなしの船やバスを貸し出す会社がある。長い間引きこもっていた男が復興支援の先頭になって働いている話も聞く。仕事の合間をぬってインフラ復旧に汗するボランティアも大勢いる。まだまだ日本人は捨てたものではない。
むしろ、心ある人の方が多いからこそ、少数のエゴイストがニュースに取り上げられるのだろう。そう考えたい。それにしてもこういう人たちはどうして声が大きいのだろう。彼らが、恥ずかしくてたたまれない社会になってほしいものだ。

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