投稿日:2012年2月13日|カテゴリ:コラム

皆さまもお気づきだろうが、近年、テレビ番組のレベル低下が著しい。最近は、どの民放チャンネルを覗いても2流、3流のタレントが雛段に並んでクイズに答えるか、愚にもつかない談笑をしている。夜が更けると韓国ドラマかテレフォンショップ。午後の時間帯は再放送ドラマオンパレード。土曜日の午後はもっとひどい。自局の土日夜の放送の予告を繰り返し流しているだけだ。見せられる番組がよほど払底しているようだ。
テレビ番組の凋落の原因はインターネットの普及と進歩によって、我々が情報の入手をテレビに頼らなくなったことがある。インターネットは好きな時間に自分が必要とする情報だけ得ることができる。トイレを我慢してテレビの前に座っている必要がなくなった。情報発信源としてのテレビの地位が相対的に低下したのだ。
もう一つの原因は言うまでもなく経済不況にある。リーマンショック、東日本大震災、投機集団による意図的な円高操作、タイの大洪水、ギリシャに端を発するユーロ不安など、次々と襲う経済的苦境によって、スポンサーがこれまでのように高額な広告料を捻出できなくなった。
この2者が相互に絡み合って番組制作費がどんどんと削られて、作品の質はあれよあれよと言う間に低下した。夜の街を肩で風を切って歩いていた業界人たちも見るも哀れな凋落ぶりである。高いギャラのタレントほど仕事の口がない。名前と顔が一致しないようなお笑い芸人と、医師や弁護士の肩書をもつ文化人タレントばかりにお声がかかる。
業界人も可哀そうだが、地デジ化という国策で強制的に液晶テレビやアンテナを買わされた挙句、お笑い芸人の井戸端会議を見せられている私たち国民の方がよほど好い面の皮と言うものだ。

Q「南スーダンでPKO活動する自衛隊を警護するのはどこの国の部隊ですか?」
A「・・・・・・・・」
✕ 正解:バングラデシュ
Q「武器輸出三原則の基準を緩和するのか?」
A「PKOで使った建設機械はその国においていくことも検討している」
✕ 武器輸出問題とPKO部隊の武器使用基準問題を混同
Q「航空自衛隊基地のある硫黄島は何県にありますか?」
A「沖縄県」
✕ 正解:東京都
Q「伊江島はなんと読みますか?」
A「いおうじま」
✕ いえじま
Q「エア・シーバトル構想とは何か?」
A「分かりません」
✕ 正解:中国に対抗した米国の新しい攻撃作戦構想

一昔前のテレビ番組「クイズ赤恥青恥」の回答映像ではない。現在開催されている予算委員会における委員と田中直紀防衛大臣との質疑応答の場面である。担当大臣に就任しながら、喫緊の要事、普天間基地移設問題で渦中の地となっている辺野古へ赴いたことがない。また主要関連法案の大意を理解していないなどは言語道断である。
がしかし、この男の無能ぶりを強調するために、三流クイズ番組のように「これは知っているのか」、「こんなことも知らないのか」と、ことさら無知をあげつらうような質問ばかりする連中の品性も下劣と言わざるを得ない。
極めつけは田中大臣が委員会を途中退席してコーヒーを飲んでいたことを追求してしたり顔。これに対して大臣が大真面目に「今後は国会内ではコーヒーを飲まない決意で臨みたい」と答えるのだから何をかいわんやである。
田中氏が天性のいじられ役であることはもう十分に分かったから、茶番はもうお終いにしてほしい。ある試算によると、国会の1日の運営費は3億円近くになるという。私たちはこんな高価なお馬鹿番組を観るために税金を払ったつもりはない。
田中大臣のクイズ番組だけではない。胸にバッジをつけた紳士淑女風の連中がやりもしないのにまことしやかな台詞を饒舌に闘わせている。今国会議事堂で行われている論戦はみな高額な制作費の茶番ドラマだ。いくら深刻なそぶりをして見せても、本当の目的はいかに自分が有権者に目だって映るかの一点にある。国会ドラマと言えよう。皮肉なことに映画やテレビドラマで演じられる国会の方が本当の国会よりもよっぽど真剣な議論をしている。
今の日本社会の状況は日本人全員がゆっくりと自殺への道を歩んでいる。ここまで腐りきった国会は定数削減などでは根治を期待できない。今の国会議員には全員退陣していただくと同時に、衆愚化した政治制度を根本的に改めなければならないのではないだろうか。と同時に、こういう馬鹿なタレント代議士ばかりを選出した我々自身が猛省しなければならない。

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