普段の生活で時々関るけれど、よく意味が分からないままになっている物が結構ありませんか。私にはあります。その一つが「収入印紙」です。
高額な商品を購入した際に発行してもらう領収書に、薄緑色の吹けば飛びそうな切手みたいなものがぺたっと貼ってあります。これが収入印紙です。この際に使われる印紙は200円のものです。収入印紙はすべて200円かというとそうではありません。極めて稀にですがバカ高い印紙にお目にかかります。
先日、パスポートを取得にサンシャインシティにある東京都の出先機関に行って参りました。この時には14,000円の収入印紙に、東京都証紙と称する、2,000円の、これまた収入印紙、合計16,000円もの収入印紙を要求されました。
おそらくパスポート発行手数料なのだろうと想像しましたが、デフレが蔓延している今時、高すぎるように思います。しかも手数料なら現金で払えばそれで済むのに、わざわざ収入印紙を購入してそれを貼ってくるようにとの命令です。この役所の隣の写真屋で収入印紙を売っていますので、数メートル歩いて購入して窓口に向かいます。なぜこんなややこしい方法をとるのでしょう。素直に窓口で「金払え」と言えば簡単ではないでしょうか。
私は幸運なことにパスポーや運転免許証申請時以外には、自分自身がこの収入印紙を貼る機会が少ないのですが、稀に領収書への添付を要求されることがあります。その度になぜこんな余計な出費をしなければならないのだろうと疑問に感じます。しかも印紙代の200円は国の懐に入ると聞きました。なぜ、善良な市民間の取引に際して国に200円も支払わなければならないのでしょうか。
周りの人に聞いても十分に納得のいく説明をしてくれる人はいません。いろいろな人から集めた断片的な知識をまとめると次のようになります。収入印紙とは印紙税という税金を支払ったという証明書です。これを貼る、つまり印紙税を支払うことによって、その商取引を正式に認める。したがって、領収書にこの印紙が貼っていない場合には脱税を犯したことになる。
こう説明されても、ますます納得がいきません。商取引を正式に認めると言ったって、飲み屋の支払いの際に政府の役人が出張してきて支払い場面に立ち会ってくれるわけではありません。また、領収書に収入印紙を貼ってあったとしても、後でトラブルになった時には国が収めてくれるわけでもありません。結局は当事者間の争いになるだけです。話し合いでも決着がつかず訴訟に発展した場合、ここで最初に支払った印紙代200円が功を奏するかというととんでもありません。訴訟手続きの際には、改めて眼の球が飛び出るほど高い収入印紙添付を要求されます。
つまり、200円の印紙税を収めたところで国は何も保証してくれはしないのです。それにも関わらず納めなければ脱税で処罰されます。国、都道府県の行政は、民間でお金のやりとりがあるとその度に、支払い側からは消費税を、そして受け取り側からは印紙税を労せず、かつまた有無を言わせずむしり取っていくのです。
印紙税というものの起源は17世紀のオランダにあります。1624年に「八十年戦争」の戦費調達のために税務職員が発明したそうです。これは美味しい徴税法だと思い、その後ヨーロッパ各国で導入し、1765年にはまだ植民地時代のアメリカでも導入されました。アメリカがこの印紙税を導入した目的も独立戦争の資金調達であって、もし収入印紙が発明されなければ今のアメリカはなかったかもしれません。
日本でも1873年(明治6年)に導入されました。詳しいことは分かりませんが、この年に我が国で徴兵制が開始されましたから、やはり軍備増強のための財源が欲しかったのではないでしょうか。
消費税率のアップが話題になる今日ですが、この消費税を例にとれば分かるように、税というものはいったん制定されると、厳しくなることはあっても、なくなることはありません。明治初期に導入された印紙税も昭和42年に大改正されて今もあらゆる場面で政府や地方自治体の金蔓になっているのです。
現在日本で発行されている収入印紙は額面1円に始まって最高額10万円までの31種類用意されています。私たちの日常生活では、例の200円以外の印紙を目にすることはめったにありませんし、郵便局に買いに行っても在庫がありません。
一般の商取引においては3万円未満の取引では印紙は免除されます。3万円以上100万円以下の場合に400円を要求されます。私は開業時に医療機器を購入し、その際に受け取った領収書に400円の印紙が貼ってありました。私が目にした最高額は豊島区医師会館建設の際の契約書に張られた10万円のものです。
さらに調べて、手数料としての印紙と消費税に似た印紙があり、取引の種類によって累進率が異なっているということは分かりました。しかしながら、一番根本的な問題、どのような根拠で私たちは印紙税という名の税金を義務付けられているのかが了解できません。
ああでもない、こうでもないと頭を悩ましていましたが、一つの言葉を別な単語に置き換えたところ、これまで胸に滞っていたもやもやが立ちどころに消え去り、すべてが納得できました。その方法とは「日本国」と書いてあるところを「組織暴力団日本組」に置き換えることです。
つまり、印紙税とは「テラ銭」の一つなのです。「自分のショバ内で勝手に商売すんなよ!」、「商売する時にはあがりの一部をこっちに納めろよ!」という理屈です。一方、毎年取り立てられる所得税などは「みかじめ料」と言えましょう。
実際に国家とは最大最強の組織暴力団です。ヤッパやチャカどころではなく、重火器、戦車、戦闘機まで持っているのです。北朝鮮は体裁を構わずに露骨に振舞いすぎですが、先進国とかいったってその本質に変わりはありません。
時の政府与党および行政組織が正規の構成員ですから、天下り禁止だ、行政改革だと行ってみても実現するわけがないのです。代替わりしたとしても組員を食わせる飯の種を私たち素人からとりたてるという構図を変えることはできないのです。
こうして国を暴力団に見立てて世の中の出来事を見つめなおしてみると、税金に止まらず、いままで不可解であった世の中のいろいろな出来事がクリアカットに理解できるのですから何をか言わんやです。