投稿日:2009年12月28日|カテゴリ:コラム

テレビをつけると普段観ていた番組に代わっておよそ内容の乏しい特別番組ばかりになってしまいました。毎年大晦日に近づくとこのような状態ではありましたが、今年は例年よりも特番化が早いような気がします。
インターネットの普及によってテレビ広告の市場価値が低下して広告単価が値下がりしたことに加えて、長引く不況によって、番組制作費の削減を余儀なくされたことの現れではないでしょうか。
これを裏付ける現象は日常的な放送にも明瞭に見ることができます。ひとつは今まで見たこともないような業種や企業がスポンサーになっていることです。パチンコ台製造業者、債権処理で大儲けの法律事務所のほかにも、なぜマスメディアでの宣伝が必要なのか首を捻ってしまうローカルな店までもがテレビ広告をしています。
また、これまでは料金の安い深夜帯に限られていた美容外科の広告がゴールデンタイムに進出してきました。不細工なのにやたら目立ちたがり屋のT美容外科クリニック院長の顔を頻繁に目にします。
大手製造業が業績不振によって宣伝費を抑えた結果、広告単価を値下げせざるを得なくなって小規模企業でもテレビ広告を打てる時代になったのでしょう。
番組内容も制作費用がかからないものばかりです。豪華キャストや海外ロケを必要とする大型ドラマはすっかり影を潜めました。2,3流のタレントをスタジオの雛壇に並べて、クイズを解かせたり、くだらないおしゃべりをただ垂れ流す番組が各局のゴールデンタイムを埋めています。土曜日の午後の時間帯に至っては自局の番組の予告宣伝で時間を埋めるという情けない状態です。
2年後にデジタル放送に完全移行してチャンネル数が倍増すると、一つ一つの局の価値が相対的に低下しますから、全国民が同じ時間に力道山の空手チョップを観たなどという情景は夢のまた夢。製作会社は軒並み討ち死にして、番組のレベルはなお一層低下してスポンサーも小型化して、そのうち町のスーパーがテレビ広告するようになるかもしれません。

さて、私のこの1年を振り返ってみると、次の二つのできごとがありました。その一つは3年ぶりにゴルフを再開しましたことです。
3年前、とある事情でゴルフを止めました。もともと下手くそだったので、少しでもクラブを握らない期間があると、さらにひどい状況になることが心配で、ますますゴルフから遠ざかるという悪循環に陥っていました。それに加えて昨年、胆嚢摘出があったのでアウトドアライフへの復帰はますます遠のいてしまいました。そんなわけで、もう二度とゴルフをやることはないだろうと考えて用具の処分を始めた矢先に家内からの強い誘いで再びゴルフをやることになりました。
私の所属するクラブは会員の平均年齢が高いので、少し顔を出さなくなると「近頃○○はちっとも顔を出さなくなった。きっと死んだんだろう。」とすぐに殺されてしまいます。私もご多分にもれず殺されていたのでしょう。3年ぶりに私の顔を見た人はまるでゾンビに出会ったかのようにびっくりしていました。
食堂にキープしてあった酒を3年経ってもそのままに預かってくれていたのには感激しましたが、仲の良かったメンバーが本当に亡くなってしまっていたことにはショクを受けました。
同伴者に迷惑がかからないことだけを心掛けてラウンドしているのですが、3年経って変ったことと言えば飛距離が落ちただけで、相変わらず複雑怪奇なフォームのスイングからあらぬ方向に球が飛んでいくので、同伴者には多大な迷惑をかけています。まあ、他のメンバーの忍耐の許す限りゴルフを続けていこうと思っています。

今年もう一つの報告事項は「今日のお言葉」を書き続けたことです。以前のコラムで少し紹介しましたが、昨年の暮れから家族向けに書き始めたミニコラム「今日のお言葉」を書き続けました。この「今日のお言葉」とは諺や四文字熟語や格言などを散りばめたA4一枚に入る600~800文字の小文です。
毎日書くことを約束したので、その日にあったできごとやその日にちなんだできごとを題材に随筆や論評の形で書きます。ところが、ただ文を書くだけではなく、その中に必ず新しい諺、熟語、格言が含まれていなければなりません。これは相当にしんどい作業です。
それでも雨の日も風の日もなんとか頑張って365日精勤できそうです。おかげでこの1年は、診療した後の時間の大半を「今日のお言葉」と毎週1回連載しているこのコラムの原稿作りに費やしました。
原稿書きに雨風は影響ありませんが、開業医は診療以外の時間のすべてを物書きに費やすことはできません。講演会、セミナーといった勉強会やいろいろな会合にも出席しなければなりません。経営者としての事務作業もしなければなりません。そういう会合や事務仕事の合間をぬって原稿を作らなければならなかったので、この1年は心の休まる日がありませんでした。
「今日のお言葉」は子供たちからのリクエストで始めたのですが、言い出しっぺの子供たちはそれぞれの勉強が忙しいと言ってあまり読んでくれていません。それでも、必ず毎日1編書くと決めたのは自分だったので、報酬も無く、誰が読んでくれるかもわからない空しい仕事ではありましたが、ともかく頑張りました。一度始めると止めることが難しい私の習性がいつも自分を苦しめるのですが、いろいろなテーマについて頭を整理して、それを文に纏めるという知的な訓練をしたおかげで、自分自身のボケ防止に役立ったのではないかと思います。
ただ、この作業を続けると他の活動が何もできなくなってしまいますので、今年の大晦日を一つの区切りにして「今日の御言葉」はひとまず終了することにしました。

私の今年のニュースはこの2つですが、世間では、我が国歴史始まって以来の本格的政権交代がなされたとか、ドバイ開発の粉飾決算の露呈からリーマンショックを上回る世界不況の到来が現実的になったとか、温暖化が一層深刻になって南極から巨大氷山が流れ出して北極海では白クマが共食いを始めたとか大きなニュースが目白押しです。
しかし、宇宙に目を転じれば、昨年の今と同様に、巨大彗星が地球との衝突コースに入ったとか、宇宙の膨張が収縮過程に転じたとか言うようなビッグニュースはありません。地球上の細々として煩雑なできごとなどとは無関係に、これまで通り猛スピードで膨張を続けているようです。

人生悲喜交々と言いますが、我々を取り巻く社会ではこの数年「悲」が「喜」を上回っているように感じます。来年こそは虎の一吠えで暗いニュースを吹き飛ばして、明るいできごとが溢れるようになることを祈って今年最後のコラムを終えることにします。皆様よいお年をお迎えください。

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