投稿日:2009年10月4日|カテゴリ:コラム

10月1日夜、実際に接種を担う保健所や医師会に何の通達もなく、新型インフルエンザワクチン接種に関する政府決定が報道されました。ですからこれから書くことは、私が医療関係者だから知った事項ではありません。私の所属する地区医師会が新聞報道、インターネットなどから入手した情報を纏めたものです。

1. 新型インフルエンザワクチン接種は10月19日の週から開始する。
2. ワクチンを受けられる優先順位と接種機関

第1位: 医療関係者(約100万人);10月19日の週から
第2位: 妊婦(約100万人)と喘息や糖尿病などの持病を持つハイリスク者;11月から
第3位: 1歳~小学校3年生(約1,000万人);12月から
第4位: 1歳未満の小児を持つ保護者(約200万人);来年の1月から
その他: 小学校6年生、中学生、高校生(約1,000万人)、65歳以上の高齢者(約2,100万人);来年の1月から
3. 接種法および費用:4週間隔で2回接種する。費用は6,150円(1回目;3,600円・2回目;2,550円)を自己負担する。但し、生活保護者および低所得者は無料とする。
4. ワクチンの確保:来年3月までに1,385億円かけて国産ワクチン2,700万人分、外国産ワクチン4,950万人分を国が確保する。
5. 接種場所:市町村がワクチン接種を行う医療機関を確保して、受託した医療機関は国と委託契約を締結する。受託医療機関は各自医薬品卸業者からワクチンを購入して予約制で接種する。その際、各医療機関は窓口で対象者であるかどうかを確認して、優先順位に従ってワクチンを接種して、その結果を市町村に報告する。

決まったのはここまでのようです。なぜ1回目と2回目で値段が違うのか。製法や成分が異なる国産ワクチンと外国産ワクチンの射ち分け基準はどうするのか。窓口で優先順位基準に合格した対象者かどうかを判定せよと言われても、何を元に判断すればよいのか。小学4,5年生の扱いはどうするのか。等々現場で直ちに問題となる諸点については全くもって詳細不明です。

繰り返しますが、以上の事項については、医療関係者として厚労省からの通達を受けたのではなく、テレビのニュースで聞いて初めて知ったのです。まさに寝耳に水でした。しかし、一般の方はそうは思っていません。私のクリニックでも、このところ患者さんから新型インフルエンザワクチンについての質問を頻繁に受けます。ところが、悲しいことに私たち医療関係者は一般の方よりも詳しい情報を持っていないのです。

政権交代がなされても現場を無視した行政は今まで通りなんら変わらないようです。

喘息や糖尿病でない方がそういう病気を偽って接種を希望する事態は容易に想像できます。こういった不正を私たちに一体どうやって見破れと言うのでしょうか。また、喘息と糖尿病以外にもインフルエンザに対するハイリスク者はいます。こういった患者さんへのワクチン接種の順番はどうなっているのでしょう。一刻も早く具体的かつ詳細なガイドラインを医療現場に示してほしいものです。

国が一般の方に流すべきもっと大切な情報があります。それは新型インフルエンザに対するワクチンと従来の季節性インフルエンザに対するワクチンとが全く別のものであるという事実を全国民に周知することです。

季節性インフルエンザのワクチンはすでに販売されて、地方自治体が補助金を出す高齢者への接種は10月1日から開始されました。今年流行が予測される季節性インフルエンザはAブリスベン、Aウルグアイ、Bブリスベンの3種類なのでワクチンもこの3種に対応しています。

しかしながら、一般の人にはこのワクチンと新型インフルエンザワクチンとを混同している方が少なくないのです。正しく理解している人の方が少ないと言ったほうが正しいでしょう。

この3日間に私のクリニックで季節性インフルエンザワクチンを受けた高齢者の方の8割は「これでもう安心」とおっしゃいます。「何が安心なのか」聞いてみると、概ね今回受けたワクチンが新型にも有効だと勘違いされているのです。

この誤解は19日から開始される新型インフルエンザワクチン接種の際にも起こると考えられます。従来のワクチンより高価なだけにもっと誤解を生じそうです。「もうこれですべてのインフルエンザに対する備えは万全」と。

今年の冬、インフルエンザの脅威から逃れるためには季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチン、2つのワクチンを受けなければなりません。政府にはマスメディアを通じてこの重要な事実を国民に周知徹底していただきたい。

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