投稿日:2009年4月20日|カテゴリ:コラム

先日私の家に定額給付金を受け取るための申請書類一式が郵送されてきました。早速、本人確認のための運転免許証のコピーと振り込んでもらう口座の預金通帳のコピーを同封して返送しました。
我が家は家内、息子、娘と私の4人家族で、18歳以下の者も65歳以上の者もいないので、総額48,000円が世帯主である私の指定する口座に振り込まれることになります。
豊島区では区民部に臨時で定額給付金担当課を設けて、4月12日から10月13日までの間を受付期間として対応します。給付は原則として銀行振り込みですが、銀行口座を持っていない人もいるために、窓口での直接支給との二本立ての体制をとっています。住所の特定が難しい人や申請手続きを行うことが困難な人など、さまざまな事例を想定して業務に当たっているとのことです。
今現在、豊島区だけでなく全国の地方自治体でこの想像を絶する煩雑な作業が始まっているわけです。よりによって、この時期は新年度を迎えて転出、転入、地方税、国民健康保険、国民年金等々の業務が目白押しの繁忙期です。そんな時に、この余計な業務を強いられている現場の地方公務員の方々は本当に猫の手も借りたい思いだろうと、同情を禁じ得ません。
ところで、この定額給付金は、国会に上程される前から全国挙げて喧々囂々たる非難が巻き起こった、いわくつきの愚策です。ところが、実際に給付の段階になった今、いずれのマスコミもこのテーマを全く俎上に載せようとしません。給付の現場の状況や給付金が実際にどのように使われて、政府与党の目論見通り低所得世帯の生活支援と景気浮揚策として、本当に功を奏しているのかどうかの検証は全くなされていません。
与党はともかく野党の国会議員たちも押し並べて沈黙を守っていて、うんでもすんでもありません。民主党が貝のように沈黙してしまった大きな要因は、党首である小沢一郎の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕、起訴されたことを契機に世論の流れに変化が起きたことがあるようようです。
また、国民運動を巻き起こすと言って自民党を離党した渡邉喜美も有力支持者であった高橋洋一東洋大学教授(元財務官僚)の窃盗犯逮捕、起訴もあってか、このところはまったく音無しの構えです。さらには、この法案の衆議院における再可決投票時に欠席をして、すわ自民党分裂かと思わせた小泉元総理も今はだんまりを決め込んでいます。
渡邉、小泉にしてこの体たらくですから、中川、石原、小池をはじめ、その他大勢の烏合の衆が洞ヶ峠を決め込むのも止むを得ないのかもしれませんが、それにしても、国民のため、国のためという信念で動いている政治家がこれほど見当たらないとは何とも情けない話です。国民は政治家に旗幟鮮明な政策提示を求めますが、当の政治家が一番大事にしているのは自分が選挙に当選して「先生」としての立場を守ることです。その結果、彼らの神経は、浮気この上ない世論と、その世論にもてはやされて誰が勝ち馬になるかという点だけに集中しています。現実に「風見鶏」と揶揄され続けた中曽根康弘が結果的には歴代4位の長期政権を務めるような政治風土の我が国においては致しかたないのかもしれません。

さて、肝心の定額給付金の使い方ですが、皆さまはもうすでにお決めになったでしょうか。「隗より始めよ。」本当は、あれだけの反対を押し切って給付を決めた、言い出しっぺの麻生さんが「帝国ホテルの会員制バー、ゴールデンライオンのスコッチボトル代金の半分に当てました。」とでも言うべきなのですが、小沢さんのスキャンダル以来はしゃぎまくって、給付金のことなど頭からすっかり抜け落ちているみたいです。まあ、もともとあまり容量の大きくない頭みたいですから無理なことは要求しますまい。
という訳で言い出しっぺでない私が率先して我が家の使い方をご報告します。家内はゴルフのスコアアップのために、オーガスタで片山晋呉が使用していたパターの購入に当てるとのことです。息子は通学のための自転車を購入。娘は何回かに分けて友人と美味しい物を食べに行くということです。それぞれスポーツ用品業界、地元商店街、飲食業にささやかな貢献ができます。
私は以前のコラムにも書きましたが、当初はネオン街の振興のためにキャバクラに行こうと思ったのですが、友人から12,000円ではとても遊べないと諭されたので、大いに悩んでしまいました。何に使えばこの給付金の目的である景気浮揚に僅かながらでも貢献できるのだろうかと熟慮した結果、来るべき総選挙に地元選挙区から新人として立候補する江端貴子さんへ政治献金することにしました。
江端さんは富士通社員として社会人を経験された後、フルブライト奨学生としてマサチューセッツ工科大学経営大学院に留学しMBAを取得。その後マッキンゼー&カンパニーなどで活躍されました。ところが、親御様の介護のために退社されました。この時の経験が政治の道を志すきっかけになったそうです。東京大学の特任教授を務めた後、現在は某製薬会社の社外取締役をされています。
温厚で控えめなご主人(同じくアメリカでMBAを取得)との間にご子息を設け、良き家庭の主婦、母親でもあります。爽やかで気取りのない人柄、まさに「才色兼備」を地で行く素晴らしい女性です。
さらに私が彼女を支持するもっと大きな理由は、江端さんが政治家としてなしたいと考えている分野が教育と社会福祉だということです。社会福祉は医師である私が無関心でいられるところではありません。また江端さん同様私も常々、資源のない日本が何を差し置いても力を注がなければならないことは教育であると考えていたからです。
もともと頂きたいなどと期待していなかった12,000円です。東京10区において、4年前、小泉の威を借りた刺客と称して、唐突にこの地に現れた女性風見鶏政治家に代わって、教育と福祉に心血を注いでくれる清廉高潔な政治家、また当たり前の家庭人としての常識をわきまえた政治家を選出する一助になるならば、必ずや将来における我が国の発展に結びつく、定額給付金のもっとも有効な使い道だと考えました。ただし、政権与党にとっては甚だ不本意な使われ方だと思います。麻生さん、太田さん、ごっつあんです。

その日の生活に困っておらず、なおかつ未だこれといった使途を決めかねている方は、是非とも私のように、自分が信頼する政治家へ献金してみてはいかがでしょうか。我が国は企業の献金ばかりで、本来あるべき政治家への個人献金が浸透していません。こういったことも政治の腐敗を生む温床になっています。
天下の愚策、定額給付金を逆手にとって、政治をもっと身近なものにする絶好のチャンスかもしれません。する絶好のチャンスかもしれません。

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