さあ寝ましょうと思ってベッドに入っても、なかなか眠りにつけない、寝付くまでに時間がかかる症状を入眠障害と言います。
寝床に入ってから実際に眠るまでの時間を睡眠潜時といいますがこの潜時にも個人差があるようです。倒れるようにベッドに入り、ふとんを被るやいなやいびきをかきだす人もいれば、しばらくの間もそもそと自分の一番快適なポジションを探しているかのように動きまわってから眠る人もいます。
多くの人は睡眠体勢に入ってから30分以内で眠りに就きます。長くかかる体質の人でも1時間以内には眠れます。ところが、何らかの原因で入眠が障害されると1時間以上かかってもベッドの中でのたうちまわることになります。
その日の昼間に上司にきつく叱責されるような、とてもいやな目に遭った晩。これとは、逆に念願かなって何かの大会で優勝したような歓喜覚めやらぬ晩。翌日、一世一代の大商談をひかえた晩。こういった夜は精神的な興奮度が高まっていますから、寝付くまでの時間が延びてしまうのも当然です。
たいていの場合にはその晩の睡眠時間が足りなければ、翌晩にぐっすり眠って前の晩の睡眠不測を取り戻してしまいます。ですから、次の日に多少眠気を感じても昼寝をしないで活動することをお奨めします。下手に、健康のためには寝なければいけないと誤った判断をしてたっぷりとお昼寝をとってしまうと、次の晩もまた、なかなか寝付けなくなってしまいます。
こういったことを繰り返していると、前にお話した不眠→お昼寝→不眠→お昼寝の悪循環に陥ってしまいます。地球の自転に合わせた一日のリズムを狂わさないように努めることが肝心です。
いま述べたような一時的な入眠障害の特殊なものとして時差ぼけがあります。1,2時間の時差は身体のほうでうまくキャンセルしてしまいますが、時差が6時間以上にも達する海外旅行では前にいた場所の一日のリズムに体が適応してしまっているために新しい土地のリズムに慣れるまでには2,3日かかることがあります。
時差による影響は東方向への移動の際に強く現れますから、アメリカ旅行では往った時が、ヨーロッパ旅行では帰ってきた後に苦しむことになります。
入眠が困難な晩が週に3晩以上で3週間以上続くと、本格的な不眠症の仲間入りとなります。寝つきが悪いという入眠障害は中途覚醒、熟眠感が得られないタイプの不眠や早朝覚醒型の不眠に比べて最も頻度の高い症状です。また、他のタイプの不眠と組み合わさって起きてくることも少なくありません。
原因は実にさまざまで、原因によって治療方法も異なってきますから、長期にわたって寝つきの悪い方は市販の薬を買うよりも、まずは専門医を受診することをお奨めします。