投稿日:2016年10月17日|カテゴリ:コラム

前回、我が国の地球温暖化対策の出遅れを述べた。様々な観測結果や異常気象の頻発からみて、温暖化は予想以上のスピードで進んでいるように思われる。

温暖化がこれ以上のレベルになると私たちの生活にどういう影響が出るのだろうか。

まず日本ではウインタースポーツができなくなるだろう。将来の子供たちは日本でスキーができたなんて信じられないかもしれない。

でも、スキーやスケートができなくなるなんて温暖化によって引き起こされる現象の中では些末な出来事に過ぎない。私たち人間を含めた全生物の存亡に関る危機的状況が予想される。

南極大陸の氷が解けると海面が上昇して、海抜の低い地域は水没し、南太平洋の島国は丸ごと消滅してしまう。すでに過去100年の間に海水面は19cmも上昇している。水没を免れた地域でも台風などの時の高潮で常に浸水の憂き目にあう。

しかも、その台風やハリケーンは海水温の上昇によって、今よりはるかに強力かつ巨大化するとともに頻発する。

巨大な災害が多発するために社会インフラが破壊される。熱波による死者や山火事が多発する。

至適環境が得られないために農業生産量が大幅に減少して世界レベルで飢饉が起きる。農産物を資料とする牧畜は農業より先に壊滅する。人々は残された食料や水を奪い合うために各地で戦争が起きる。

人間以上に被害を受けるのが野生動物。温暖化によってシロクマを始め2475種類の野生生物が絶滅すると考えられている。

人類も水不足、食糧不足、そして愚かな戦争によって、全人口の何割かが死滅するだろう。それでも温暖化が止まらなければ人類は根こそぎ絶滅する。平均気温が50℃になると人類は死滅するという予測がある。

 

この先、全人類が危機感を一つにでき、パリ協定で掲げた目標値、平均気温を産業革命然と比べて2℃以内に抑え込めたとしても、相当の環境変化が予想される。その中で医師である私に関係する出来事は病気の種類が変わることだろう。

動物媒介の感染症や、水媒介性の感染症が増加すると考えられる。

具体的には蚊が媒介する日本脳炎、マラリア、デング熱、ウエストナイル熱、リフトバレー熱、ダニが媒介するダニ媒介性脳炎、げっ歯類が媒介するハンタウイルス肺症候群、水媒介性のコレラやアメーバ赤痢など。

マラリアやなんて学生時代に寄生虫学で習いはしたが、実際の患者さんなんて見たことがない。「戦前南方に侵攻した旧帝国軍兵士が悩まされた病気」というくらいの認識しかない。そのマラリアが間もなく沖縄、九州地域では蔓延する可能性がかなり現実的になっている。

一昔前の医療は感染症との戦いであった。野口英世、北里柴三郎、パスツールなどの偉人は皆感染症学者であった。だが、ペニシリンを皮切りに次々と開発された抗生物質や、ワクチンのおかげで我々は感染症に勝利したかに見えた。確かに、天然痘ウイルスはこの地球上から消し去った。

だが敵もさる者。種々の菌が抗生物質に対する耐性を獲得し始めてきた。そこへ追い打ちをかけるようにこの温暖化だ。温暖化が進めば先ほど示した感染症以外に、熱帯雨林に生息する動物を宿主とする、全く未知のウイルス、細菌、原虫が登場してくる可能性も大だ。

人類は再び感染症の大逆襲におびえなければならないだろう。

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