投稿日:2015年12月14日|カテゴリ:コラム

朝鮮労働党が来年の5月に第7回党大会を招集すると発表した。この大会の開催は1980年以来36年ぶりとなる。36年前の第6回大会は金正恩の祖父、金日成によって開かれたもので、この大会で金正日が党書記、政治局常務委員、軍事委員に選出されて、正式に金日成の後継者として内外に発表された。

このように北朝鮮において本大会は朝鮮労働党の最高意思決定機関であり、5年に1度開催されることになっていた。だが、父、金正日の時代にはついに1回も開催されることはなかった。偉大なカリスマの日成から権力を引き継いだ正日が専軍政治にひた走ったために、経済目標が全く達成されず、餓死者の山を築いてしまった。党大会ではその5年間の様々な分野の業績を報告しなければならないのだが、とても誇らしげに報告する業績のなかった正日には党大会を開くことができなかったのだ。

父がなしえなかった党大会を開くことによって、正恩は父を超え神格化された祖父、日成と同じ位置に就いたことを示そうとしているのだろう。

正恩が正日の後継者争いに勝った理由の一つに姿形が祖父、日成に似ていることがあげられていた。国民からの支持率を上げるために祖父の顔に似せるために6回もの整形手術を受けたという噂まであるくらいだ。祖父の歩き方や仕草も入念に練習したと聞く。

心理学では異性の親に対するエディプスコンプレックスやエレクトラコンプレックスが有名だ。祖父コンプレックスというものがあるのかどうか定かではないが、祖父が彼の行動の原型となっていることは確かだろう。

一般の家庭でも厳しい圧力をかけてくるくせに身近でだめな部分も見えてしまう父に比べて、時々現れて可愛がってくれお年玉をくれる、いいとこどりの祖父に孫はなつきやすい。しかも目の上のたん瘤の父がその祖父には頭が上がらないとなれば、祖父に対する強い憧憬の念が生まれるとしても不思議ではない。

それでも、分別ある大人に成長して物事をあるがままに捉えることができるようになれば、心の中で美化された言動のメッキが剥げて、祖父からの呪縛が解けてくるはずだ。いい歳になっても相変わらず祖父の姿を追い続けるコンプレックスを持っているということは、幼児性の表れだと思う。

 

つらつらと金正恩の祖父へのコンプレックスを書いているうち、同じような精神構造の男の顔が浮かんできた。その男とは日本国総理大臣、安倍晋三だ。

安倍も正恩と同様、母方のおじいちゃま、岸信介に対する強いコンプレックスから抜け出せていない。事あるごとにおじいちゃまの名前を挙げ、またおじいちゃまの戦前の戦争犯罪人の汚名を晴らし、戦後の業績をことさら高めようとしている。

そして、祖父コンプレックスのこの二人は強がりで見栄っ張りで独裁専制を目指すという点でも酷似している。

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