投稿日:2015年1月26日|カテゴリ:コラム

この宇宙は4種類の力によって動かされていると考えられている。言い換えればこの宇宙には4つの力しかない。
その力とは強い相互作用、電磁気力、弱い相互作用、重力だ。このうち電磁気力と重力はお馴染みだが、強い相互作用、弱い相互作用と言われてもぴんとこないかたがほとんどだろう。強い相互作用とは原子核内の陽子や中性子同士を結合する力。弱い相互作用とは中性子が陽子に変わるβ崩壊を起こしたり、π中間子を崩壊させる力をいう。

それぞれの力の特徴を述べると
強い相互作用:力は一番強いが、その力が影響する範囲はとても狭い。力を伝えるゲージ粒子はグルーオン。
電磁気力:力の影響範囲は無限大で強さは距離の二乗に反比例する。伝達は光子(フォトン)による。強さは強い相互作用の1/100程度。
弱い相互作用:力の強さが電磁気力の1/1023と極めて弱いうえに、届く範囲も、強い相互作用よりもさらに狭い。伝達ゲージ粒子はウィークボゾン。
重力:強さは極めて弱くて天体レベルの質量にならないと影響を感じないが影響範囲は無限大で宇宙の果てまでも届く。伝達は重力子(グラビトン)と言われている。
他の3つの力はプラスとマイナスの方向の力があるのに、重力は引く力である引力しか見つかっていない。マイナスに相当する斥力は未だ未発見である。とても奇妙な力と言える。

我々人間もこの4つの力によって支配されている。しかしながら、強い相互作用と弱い相互作用は素粒子レベルの微小の世界で力だ。重力は我々が地上にへばりつけられていることからその存在を感じることができるが、生まれてから死ぬまで、地球の質量によってほとんど一定の強さしか感じられないので、あまりにも当たり前すぎて、その存在を意識することがない。
普段私たちが日常生活の中でその存在を意識する力のほとんどは電磁気力なのだ。
言い換えれば私たちの生活の大半は電磁気力によって支配されていると言える。
家の照明、エアコン、掃除機、洗濯機、パソコン、スマホなどがすべて電気の力で動くことは言うまでもない。
燃料電池車や電気自動車が電気で動くことも理解できるだろう。だが、ハイブリッドカーとなるとどうだろう。電気の力とエンジンの両方の力と答える人が少なくないのではないか。確かに正解だが、それではエンジンの発生する力の本体とは何なのだろ。
先ほど述べたように、この宇宙の存在する力は強い相互作用、電磁気力、弱い相互作用、重力の4つの他にはないのだ。
ガソリンが燃焼する時に発生する際のエネルギーも実はこの4つの中のいずれかなのである。重力でないことはすぐわかる。ガソリンの燃焼が核分裂反応や核融合反応のような強弱相互作用によるものでないことも想像できるだろう。すると残るのは電磁気力しかない。だが、ガソリンの燃焼が電磁気力によると言われても釈然としないかもしれない。
しかし、ガソリンエンジンとはガソリンの成分であるブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの炭化水素物が酸素と反応して化学変化を起こして最終的に二酸化炭素と水に化学変化する際の余剰エネルギーを利用しています。
燃焼に限らず、化学変化はプラスに荷電した原子核とそれを取り巻くマイナスに荷電した電子から構成される原子同士の結びつき方を変えること。つまり化学反応とは電磁気力による現象なのだ。

38万km離れている月と地球との間の情報伝達には最低でも1.3秒の時間がかかってしまう。何年もかかってしまうかもしれない。それはこの宇宙で最速の光の真空中の速さが約30万km/秒で、月と地球の距離が384,400kmだからだ。この光速の有限性は衛星放送での会話のやり取りに生じるタイムラグで体験されていると思う。
それでは、長さ38万kmの鉄の棒を月と地球の間に差し渡しておいて、一方の端をグイと押せば、時間差なしに向こう側に合図を送れるのではないだろうか。そうすれば光よりも早く情報を伝えることができる。
だが、残念ながら地球上で押した棒の月側の先端がグイと伸びるまでには1.3秒よりもはるかに長い時間がかかってしまう。なぜならば、棒の一端を押して反対側の端が動くという現象を詳しくみると、棒の一端の原子に力を加えて、その原子が隣の原子に力を伝え、またその隣にといった具合に電磁気力のリレーが起きているのである。
つまり、棒を押すということも電磁気力によって行われているのだ。しかも鉄と言う真空よりもはるかにフォトンの速度が遅くなる媒体の中での力の伝達だから、けっして30万km/秒と言う真空中の光速を超える速度で伝わることはできない。

物理学的にみると、一見、電磁気と無関係に見えるような私たちの身の回りの現象もほとんどすべてが電磁気力によってなされている。つまり私たちは電磁気力の世界の住人と言える。

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