投稿日:2014年8月11日|カテゴリ:コラム

「ですから、……皆さんのご指摘を真摯に受け止めて、議員という大きな、ク、カテゴリーに比べたらア、政務調査費、セィッイッム活動費の、報告ノォォー、ウェエ、折り合いをつけるっていうー、ことで、もう一生懸命ほんとに、少子化問題、高齢ェェエエ者ッハアアアァアーー!! 高齢者問題はー! 我が県のみウワッハッハーーン!! 我が県のッハアーーーー! 我が県ノミナラズ! 西宮みんなの、日本中の問題じゃないですか!!」
「そういう問題ッヒョオッホーーー!! 解決ジダイガダメニ! 俺ハネェ! ブフッフンハアァア!! 誰がね゛え! 誰が誰に投票ジデモ゛オンナジヤ、オンナジヤ思っでえ!」
「ウーハッフッハーン!! ッウーン! ずっと投票してきたんですわ! せやけど! 変わらへんからーそれやったらワダヂが! 立候補して! 文字通り! アハハーンッ! 命がけでイェーヒッフア゛ーー!!! ……ッウ、ック。サトウ記者! あなたには分からないでしょうけどね! 平々凡々とした、川西(市役所)を退職して、本当に、『誰が投票しても一緒や、誰が投票しても』。じゃあ俺がああ!! 立候補して!!」
「この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッア゛ーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ! その一心でええ!! ィヒーフーッハゥ。一生懸命訴えて、西宮市に、縁もゆかりもない西宮ッヘエ市民の皆さまに、選出されて! やっと! 議員に!! なったんですううー!!!」
「ですから皆さまのご指摘を、県民の皆さまのご指摘と受け止めデーーヒィッフウ!! ア゛ーハーア゛ァッハアァーー! ッグ、ッグ、ア゛ーア゛ァアァアァ。ご指摘と受け止めて! ア゛ーア゛ーッハア゛ーーン! ご指摘と、受け止めて! 1人の大人として社会人として! 折り合いを付けましょうと! そういう意味合いで、自分としては、『何で、実績に基づいてキッチリ報告してんのに、何で自分を曲げないといかんのや』と思いながらも!」
「もっと大きな、目標ォ! すなわち! 本当に、少子高齢化を、自分の力で、議員1人のわずかな力ではありますけれども、解決したいと思っているからこそォォ!! ご指摘の通り、平成26年度には195回行きました。301万円支出させていただきました。日帰りでございました! そのご指摘を真摯に真剣に受け止めようとするから!」

前置きが長くなったが、以上は例の号泣男の記者会見における発言を文字として起こした原稿である。ネットに載っていたものを転載させていただいた。映像で観る以上に彼の錯乱ぶりと支離滅裂さがよく分かる。主語に対応した目的語や述語が見当たらない。何を言いたいのか全く不明。おもちゃを買ってもらえなかったガキが路上で駄々をこねて泣きわめいている姿を彷彿させる。

この前兵庫県議会議員、野々村竜太郎の仰天記者会見の映像がメディアに流された後、私のコラムへのアクセスが急増した。分析結果によると「演技性人格障害」をキーワードに2008年に書いたコラム、「演技性人格障害」と2009年の「再び演技性人格障害-婚活詐欺殺人事件?」へのアクセスが増えたのだということが分かった。
2008年のコラムはロス疑惑の主役、三浦和義について書いたもので、2009年は結婚詐欺殺人事件の被疑者、木嶋香苗に関するコラムであった。そして、どこかの精神科医が野々村氏も「演技性人格障害」であると言ったので、このキーワードによる検索が頻発したようだ。
だが、この男、「演技性人格障害」といった立派な診断名がつくほどの男だろうか。前記のコラムで述べたように演技性人格障害は浅薄で不安定な感情、自己脚色、芝居がかった誇張された感情放出、被暗示性、自己中心性、他社への配慮の欠如、傷つきやすい感情、評価、刺激及び注意をひきたいという渇望の持続などを特徴とする。
テレビで見る限りだが、確かに不安定な感情、芝居がかった誇張された感情表出は認められる。だが彼の言動は筋立てなどなく、とても芝居と呼べるような代物ではない。それに引き換え三浦や木嶋の演技っぷりはそれは見事なものであった。だからこそあれほどの事件を引き起こせたのだ。
故三浦和義も収監中の木嶋香苗も自分たちが号泣男と同類とされたことを知ったら、さぞや憤慨するに違いない。
人格障害は先天的な資質を基本として、それに発達過程で後天的な因子が加わった結果、最近は極端にゆがんだ人格に出来上がってしまった状態をいう。

ところで、博打好きを「ギャンブル依存症」、スケベな女好きを「セックス依存症」のように、なんでも病名をつけたがる傾向がある。罰を逃れる手段として利用しようとする弁護士と、新しい病名を作り出して売名したいと思う心理学者や精神科医の思惑が強く働いていると思う。
だが、三浦や木嶋のように平均的な人格像から大きくかけ離れた人物は○○障害と診断がつくだろう。しかし、誰にでも彼にでも診断名をつけることには反対だ。
前回のコラムで述べたように球形のように特徴のない人格などあり得ない。つまり、どんな人でも恣意的に人格障害にしてしまうことができるのだ。
だから、野々村氏が極めて特異な人物であることだけは間違いないが、たった数分の会見映像だけから野々村氏に対して安易に演技性人格障害などという診断をつけたくはない。
あの会見だけから言えることは未だに大人の人格に発達していないということだ。知能が一定水準まで発達しない障害を精神発達遅滞というのだから、敢えて彼に病名を付けるならば人格発達遅滞とでも言っておくのが適当ではなかろうか。もちろん、そういう病名は存在しないが。

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