投稿日:2013年12月16日|カテゴリ:コラム

特定秘密保護法案が衆議院、参議院で圧倒的多数を占める与党によって強行採決が繰り返され、12月7日深夜に成立した。
この法律は、国益上特に秘匿することが必要である安全保障に関する情報を「特定秘密」として指定し、関係者が漏えいした際の厳しい罰則を定めた法律。
安倍首相は国防に関係する機密事項の漏えい防止が目的であり、日本にこの手の法律が整備されていないために、同盟国であるアメリカが重要な軍事機密事項を共有させてくれないと力説する。
確かに、防衛ミサイルの設置場所や兵器の能力が、敵対する国やテロリストに筒抜けになったら大ごとだ。国がこういった情報の漏えいに神経質になるのはよく理解できる。したがって何らかの秘密保全法は必要かもしれない。
しかしながら、今回の法案には非常に危険な匂いを感じる。その理由は安全保障に関わる秘密事項の範囲が明確でないこと、該当事項とするかしないかの決定権が全面的に行政の手にあること、そして法案成立の性急さだ。
この法律では、時の内閣が安全保障に関係すると主張すれば、直接的に国防に関係する事項でなくても特定秘密事項とされる。そうなると、本当の安全保障上の事項以外の事実が拡大解釈によって秘密事項とされ、主権者たる国民に知らされなくなることが危惧されるのだ。
もっとはっきり言えば、この法律が行政の不都合を隠ぺいする強力な武器として使われるのではないかと心配するのである。そして、歴史を振り返ると、この手の不安が杞憂ではないことが分かる。いつの時代も、権力者は自分に不都合なことは闇に葬ってきた。
我が国の近代史に限ってみても、昭和15年の大政翼賛会結成の頃から、国民は軍部に不都合な事柄を一切知らされず、「鬼畜米英」などと叫ばされて、自己破滅的な戦争に一気に突き進んだ。
何よりも秘密の決定が行政単独に任されていることは危険この上ない。「盗人に鍵を預ける」という諺があるが、まさに本法律のことを指しているかのようだ。鍵を預けられて、何も盗まない泥棒がいたら、よほど無能な奴だ。どんなに志が高い人間でも、目の前にお宝を積まれて「さあどうぞ」と言われたら、手が出ないはずがない。
さらに、この法律は3権分立の破壊をも意味する。なぜならば、行政訴訟の際に、被告である行政が自分に不都合な事項を特定秘密事項に指定してしまえば、裁判官にさえ開示しなくて済むからだ。すでに立法府が行政の操り人形と化している現在、司法までもが蚊帳の外に置かれたならば、3権の中で行政が抜きんでた権力を持つことになる。もはや3権分立とは言えない。
私が一番疑わしく思うのは、この法案をなぜ今の時期に大慌てで強引に成立させなければいけないのかという点である。安倍さんは緊張を増す、対中国、対韓国防衛政策上の必要性を匂わせる。安倍さんにとって好都合のタイミングで中国が防空識別圏設定を表明したために、納得してしまう方もいるようだ。しかし、本法案はずっと以前から練られてきたものであり、中国の防衛識別圏に合わせて作られたものではない。
では、これほど急ぐ理由とは何なのだろう。私は、性急な秘密保護法案の成立には福島第1原発事故が関係していると思えてならない。
「汚染は完全にコントロールされている」、「私を信じてください」と世界中に大見得をきってしまった安倍首相。だが、本当は福島原発のメルトダウンによる環境汚染は収束どころか、これまでに人類が経験したことのない恐怖の段階に踏み入ってしまったのではないだろうか。これが世界中の知るところとなれば政府の威信は地に落ちるだけでなく、日本国の信用もなくなり国益を大きく損なうだろう。新法案成立に躍起になるのに十分な理由だ。
しかし、そうであったとしても、原発事故に関する秘匿することは許されない。この問題は、日本国民は言うに及ばず地球上の人類すべての存亡にかかわる事柄なのだから。
これはあくまで私の直感的な推理であってあたっていないかもしれない。しかし、このような危険性を孕んだ悪法を決して許してはいけないと思う。

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