投稿日:2016年6月6日|カテゴリ:コラム

次から次に出てくる公私混同の事実。3週前のコラム、「厚顔無恥」で取り上げた現東京都知事、舛添要一の公金私用疑惑は未だに世間を騒がしている。

彼がネコババした額の1件1件は、これまでの政治家の金銭にまつわる事件に比べれば、かなり少額なのだが、長年にわたって、いじいじと生活費のすべてを公金で賄っていたというさもしさが余計に民衆の怒りに火を付けているようだ。

さらに、明るみになって出てくる不正行為のすべてが、彼が以前に厳しく糾弾してきた行為であること。すなわち言行不一致の極みであることが怒りの火に油を注いでいる。例えば、ファーストクラスの海外視察旅行について、彼は以前自分の著書で「さもしい行為」と断じている。公用車についても「そんなものは要らない。公共交通機関かタクシーを使えば良い」と著述している。

口が滑ったと言い逃れできない活字で自分が非難していたことを、何から何まで行っている。普通の神経の持ち主ならば、人前に顔を見せられないはずだ。頭がいいはずなのに、特定の事柄に関する記憶力だけ悪いのだろうか。過去の自分の発言など素知らぬふりで、臆面もなく人前に姿をさらしている。それどころか、例の吊り上がった目で記者たちを睨みつけさえする。盗人猛々しいとは舛添のことを言うのだろう。

彼が言うところの第3者の弁護士による厳しい精査とは、どうせ非難を浴びている舛添の行動がもともと欠陥だらけの政治資金規正法に照らし合わせて違法ではないというご託宣を受けるためのセレモニーに過ぎないことは誰もがお見通しだ。

そして、道義的責任を問われても、機転の利く頭でへ理屈をつき通してこの騒ぎを切り抜けられると高を括っているに違いない。それが見え見えだけにまた腹が立つ。へ理屈とは、嘘を真実と言いくるめる技術だ。へ理屈がまかり通るならば、嘘つきの天下になってしまう。

舛添の言動を見ていると、その根底には、自分は頭がいいから、どんな嘘を吐いても馬鹿なお前らを言いくるめられるという、人を見下した傲岸不遜さが見てとれる。

 

嘘吐きといえば、もっと大きな嘘を吐きまくっている男がいる。言わずと知れた現総理大臣、安倍晋三だ。

安倍は消費衛を8%から10%に引き上げるという公約を掲げて政権を獲得した。最初は平成27年10月に引き上げるはずであった。しかし、アベノミクスなる経済政策の成果が道半ばであるから、その成果が出て日本経済が立ち直り、個人消費も伸びる平成29年4月に延期する。しかし、2度と延期はしない出必ず実施する。そういう公約を立てて平成26年11月21日に衆議院を解散し、総選挙で大勝した。

それにも拘わらず、いけしゃあしゃあと平成31年10月まで再延期すると言ってのけた。しかも、その理由は曖昧なままだ。

最初は、サミットで強引に議長声明に盛り込んだ、リーマンショック並みの世界的不況を理由にしようとしたが、「サミットで再延期を求められたかのように責任逃れするな」と、各国から非難されて、リーマンショックのような状況ではないと訂正せざるを得なかった。そこで出てきたのが、「新たな判断」という、何が何だかわからない理由付け。

新たな判断で公約違反が許されるのならば、公約などあって無きに等しい、軽々しく口から出たでまかせということになる。

しかも、公約を違えるのならば、衆議院を解散して国民に信を問うのが筋だろう。だが、安倍は来るべき7月の参議院選挙で国民の信を問うとぬかす。参議院議員の選挙は3年ごとにあらかじめ決まっていたものであって、これが公約違反に対する国民の審判になり得ないのは明らかだ。こんな詭弁がまかり通るのだろうか。

さらに恐ろしいのは、これまで安倍はアベノミクスや骨太の政策を看板に選挙を行い。勝つと、国民の信を得たとして、それとは全く関係のない「秘密保護法案」や「安保関連法案」を強引に通してきた。そういった政策は選挙時の争点ではなかったはずだ。でも確かに、マニフェストの隅っこに書いてはあった。嘘とまでは言えないごまかし。まさに詐欺商法の手口そのものだ。

今度また参議院選挙で安倍に勝利させたら、いったい何をしでかそうとしているのだろう。恐ろしい限りである。

 

昔は「嘘つきは泥棒の始まり」と言った。現在はこう言うべきだろう、「嘘つきは政治家の始まり」と。ただ、勘違いしてはいけない。たわいのない小さな嘘吐きや嘘を吐いたことに後悔の念を抱くような者は政治家にはなれない。できるだけ大きな嘘つきになることと、自省心、羞恥心、共感性をきれいさっぱりとそぎ落とさなければならない。そして何よりも嘘を真実と言い含めるへ理屈の技術(ディベートと言うのだろうか)を磨く必要がある。

 

こうして見ると政治家になるのもかなり大変だ。少なくとも人間らしい心の持ち主にはとても務まりそうもない。

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