投稿日:2016年4月4日|カテゴリ:コラム

犬と猫は古くから人間が友として飼ってきた動物、いわゆるペットの双璧を成す。この両者を比べると、長らく犬が王者の地位を保ってきた。

古くはスピッツがペットの代表であったが、やがてテレビドラマ「名犬ラッシー」でコリーが、「名犬リンツィンツィンツィン」でシエパードが、デズニー映画、「わんわん物語」のヒットでコッカスパニエルがはやり、「101匹わんちゃん大行進」でダルメシアンと言った具合に流行廃りはあったものの、犬としてはペットの王として君臨してきた。

ところが近年、この犬に猫が急追しており、間もなくトップの位置が交代すると聞く。

猫ブーム到来の主な理由は、充分な運動をさせることのできる庭付きの1戸建て住宅は夢のまた夢である都市型生活にとって猫の方が飼いやすいという点にあると考えられる。

1日1,2回の散歩や毛並みの手入れがが欠かせない犬と比べて、猫はある程度のスペースと水と餌さえあればまったく放っておいてかまわないからだ。

散歩は自分の健康のために良いといっても、アスファルトで塗り固められた都会の道路事情では真夏の散歩は裸足の犬にとっては拷問に近い行為だ。また散歩の途中で排泄する糞尿の始末は結構な負担となる。さらに、犬は結構こまめにお風呂に入れてブラッシングをしても、どうしても獣臭がする。

それに比べて猫は、砂の入った箱を置いておけば、別に教えこまなくなくても勝手にそこに行って排泄をする。また、暇さえあれば自ら毛づくろいをして、お風呂なんかいれなくても全く匂わない。こういった飼いやすさから猫派が増えてきたのだろう。

ところで、犬愛好家には猫を好きでない人が少なくない。その理由としては気まぐれで飼い主の思惑通りに懐かない点を挙げる。

一方、猫愛好家は概して犬も好きである。犬の可愛さも十分に分かる。だがしかし、猫の魔力とも言える魅力に魂を奪われているために、どちらかを取れと言われた場合「猫」と答えざるを得ないだけなのだ。

実際に猫派の人間の猫偏愛ぶりは昔から有名で、「猫可愛がり」という言葉が生まれたぐらいである。

犬は「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」と言われるほどの飼い主に対する忠誠心が売り物である。この律儀さと賢さによって猟犬、牧羊犬、番犬、警察犬、盲導犬、救助犬などさまざまな人間の活動における助手として活躍している。

一方の猫の場合も人間との関係の起源はエジプトで鼠に対する穀倉の用心棒であったと聞く。しかしながら、鼠を捕る以外これと言って人間生活の役に立たない無為徒食。

しかも唯一の特技である鼠捕りにしても、何も人間様のためを思ってやっている行為ではなく、自分が喰いたいだけ。

臆病なのでちょっとした異変に当たっては一目散に逃げ出すので防犯の役目などもっての外である。さらに、記憶力が悪く、忠誠心に欠けるので「猫は三年の恩を三日で忘れる」とさえ言われる。

だが、猫は犬が取って代わることができない特別の使命を持っている。犬と人間との関係は所詮ギブ・アンド・テイクであり、犬は主人に愛されるために必死に役目を果たす。

猫は、人間に対してそういう具体的なサービスは一切しない。それどころか、一方的に人間に奉仕させるだけの存在かもしれない。だが、それこそがネコの真骨頂なのだ。

猫好きは、勝手気ままに振る舞っている猫が、ふっと気が向いてすりすりしてくれる瞬間に至福の喜びを感じる。愛猫家たちはそんな風に猫に躾けられてしまうのだ。

猫は人間に見返りを求めることのない無償の愛情を教え込む。以前のコラムでも述べたが、猫は偉大なる愛の伝道師なのだ。

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