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クリニック西川

2009年4月

寝耳に水の豚インフルエンザ流行

灯台下暗しと言いますが、遠い敵にばかり気を取られているとついつい身近な危険を忘れがちになって、不意に意外な者に足元を掬われることになります。
さて、4月25日午後、WHOが緊急会議を開きました。メキシコとアメリカで急速に感染者、死者を増している、鳥類にではなく私たちと同じ哺乳類である豚に感染するインフルエンザ、所謂「豚インフルエンザ」についての対策を協議するための会議です。このように感染症の専門家が大慌てしている間にもメキシコでは、22日には20名であったインフルエンザによる死者数が25日には81名に膨れ上がりました。
WHOを中心に世界各国はここ数年、東南アジアを中心に広まっている鳥インフルエンザ由来の新型インフルエンザがパンデミック(大流行)することを警戒して、さまざまな対応策を検討し、準備してきました。詳細については以前のコラムでお話しました。
我が国においてもベトナムで発生したヒトーヒト感染例から入手したH5N1株のウィルスに対するワクチンを製造して備蓄を始めています。また、現在のところ有効と考えられている抗ウィルス薬のタミフルとリレンザの国家備蓄も進めています。そして、パンデミックの発信地となることが予想されていたインドネシアにおける感染情報に聞き耳を立てていました。
ところが豈図らんや、なんとこれまで予想もしていなかった中米を発信地として鳥ではなく、豚由来の新型インフルエンザのパンデミックが現実性を帯びてきたのです。関係者にとってはまさに寝耳に水の凶報です。
これまでは鳥由来の新型インフルエンザ対策ばかりに力を注いできていて、豚由来のインフルエンザ対策は全くなされてきませんでした。千慮の一失です。これからメキシコで入手するウィルスを元にワクチン製造に精を出したとしても、製造には少なくとも半年はかかりますし、日本国民全員分のワクチンを完成させるには1年半はかかる見通しです。
またこの半年というワクチン製造期間は、従来型のインフルエンザワクチンを中止して全製造ラインを新型インフルエンザに充てた場合のスケジュールです。新型インフルエンザと並行して従来のAソ連、A香港、B型インフルエンザも流行するわけですから、そちらの方に対する防衛はできなくなります。
さらに悪いことには、遺伝学的に見て、哺乳類である豚が鳥と比べてはるかにヒトに近いことは言うまでもありません。だから、臓器移植の際に豚の臓器が用いられることがあるのです。姿、形は似ていないように思うかもしれませんが、生物として考えた場合にはかなり近しい関係にあるのです。したがって、豚に対して感染性、病原性を持っているウィルスが鳥の間で流行しているウィルスよりもヒト―ヒト感染性や病原性を獲得しやすいことは容易に想像できると思います。
鳥由来のインフルエンザに比較してより早期にパンデミック段階への進化を遂げる可能性が高いのです。つまり、現在フェーズ3で止まっている新型インフルエンザに対する警戒レベルが数日を待たないでフェーズ4、フェーズ5に上昇する恐れがあります。国際レベルでの迅速な対応が求められます。
しかし、悲観的な話ばかりではありません。メキシコとアメリカで確認された豚インフルエンザはH1N1型だということです。この抗原型は従来からヒトの社会に広く出回っているAソ連型インフルエンザと同じです。となると、ヒトはこのタイプにかなり慣れているので、ヒトに対して、それほど強い病原性を発揮しない可能性があります。事実、アメリカでの感染者の多くは軽症の経過を辿っています。逆に言えば、メキシコではなぜ高い致死率を示すのかという疑問が生じます。
豚インフルエンザがH1N1型ウィルスであるということはまた、H5N1型である鳥由来のウィルスに対するよりも私たちの身体の免疫機構の反応性がよく、容易に抗体を獲得する可能性もあります。ですからパニックに陥らずに今後の情報を待って冷静に対処する必要があります。
今度はあまりに豚インフルエンザにばかり力点を置いて、従来の季節性のインフルエンザ対策を怠ってしまうと、こちらの方で犠牲者が累々という恐れもあります。
最悪の事態としては、豚由来の新型インフルエンザと相呼応して鳥由来ウィルスまでもが一斉蜂起することです。こうなると現在の防疫能力ではお手上げの状態になってしまいます。
政府はWHOと連携をとって新型インフルエンザの感染拡大スピードとその病原性の高さを見極めた上で適切な対策を講じるものと思います。ここで心配なのが、我が国のトップが判断に暗く、行動力に欠けることです。
ただ、敵が豚に代わっても、マスクの着用、外出禁止の事態に対する水、食料の備蓄などの準備は鳥由来の新型インフルエンザに対するのとまったく同様です。タミフルやリレンザが有効という点も変わりがありません。ですから鳥から豚に変わったからと言っていたずらに取り乱す必要はありません。
言うまでもないことだとは思いますが付け加えておきます。インフルエンザは飛沫を介した空気感染ですから、鳥だろうが豚だろうが、その肉を食べてうつることはあり得ません。むしろ美味しくて栄養価の高い豚肉や鶏肉を食べて体力をつけておきましょう。
最後に頼るのは己の体力です。

定額給付金の正しい使い方

先日私の家に定額給付金を受け取るための申請書類一式が郵送されてきました。早速、本人確認のための運転免許証のコピーと振り込んでもらう口座の預金通帳のコピーを同封して返送しました。
我が家は家内、息子、娘と私の4人家族で、18歳以下の者も65歳以上の者もいないので、総額48,000円が世帯主である私の指定する口座に振り込まれることになります。
豊島区では区民部に臨時で定額給付金担当課を設けて、4月12日から10月13日までの間を受付期間として対応します。給付は原則として銀行振り込みですが、銀行口座を持っていない人もいるために、窓口での直接支給との二本立ての体制をとっています。住所の特定が難しい人や申請手続きを行うことが困難な人など、さまざまな事例を想定して業務に当たっているとのことです。
今現在、豊島区だけでなく全国の地方自治体でこの想像を絶する煩雑な作業が始まっているわけです。よりによって、この時期は新年度を迎えて転出、転入、地方税、国民健康保険、国民年金等々の業務が目白押しの繁忙期です。そんな時に、この余計な業務を強いられている現場の地方公務員の方々は本当に猫の手も借りたい思いだろうと、同情を禁じ得ません。
ところで、この定額給付金は、国会に上程される前から全国挙げて喧々囂々たる非難が巻き起こった、いわくつきの愚策です。ところが、実際に給付の段階になった今、いずれのマスコミもこのテーマを全く俎上に載せようとしません。給付の現場の状況や給付金が実際にどのように使われて、政府与党の目論見通り低所得世帯の生活支援と景気浮揚策として、本当に功を奏しているのかどうかの検証は全くなされていません。
与党はともかく野党の国会議員たちも押し並べて沈黙を守っていて、うんでもすんでもありません。民主党が貝のように沈黙してしまった大きな要因は、党首である小沢一郎の公設秘書が政治資金規正法違反で逮捕、起訴されたことを契機に世論の流れに変化が起きたことがあるようようです。
また、国民運動を巻き起こすと言って自民党を離党した渡邉喜美も有力支持者であった高橋洋一東洋大学教授(元財務官僚)の窃盗犯逮捕、起訴もあってか、このところはまったく音無しの構えです。さらには、この法案の衆議院における再可決投票時に欠席をして、すわ自民党分裂かと思わせた小泉元総理も今はだんまりを決め込んでいます。
渡邉、小泉にしてこの体たらくですから、中川、石原、小池をはじめ、その他大勢の烏合の衆が洞ヶ峠を決め込むのも止むを得ないのかもしれませんが、それにしても、国民のため、国のためという信念で動いている政治家がこれほど見当たらないとは何とも情けない話です。国民は政治家に旗幟鮮明な政策提示を求めますが、当の政治家が一番大事にしているのは自分が選挙に当選して「先生」としての立場を守ることです。その結果、彼らの神経は、浮気この上ない世論と、その世論にもてはやされて誰が勝ち馬になるかという点だけに集中しています。現実に「風見鶏」と揶揄され続けた中曽根康弘が結果的には歴代4位の長期政権を務めるような政治風土の我が国においては致しかたないのかもしれません。

さて、肝心の定額給付金の使い方ですが、皆さまはもうすでにお決めになったでしょうか。「隗より始めよ。」本当は、あれだけの反対を押し切って給付を決めた、言い出しっぺの麻生さんが「帝国ホテルの会員制バー、ゴールデンライオンのスコッチボトル代金の半分に当てました。」とでも言うべきなのですが、小沢さんのスキャンダル以来はしゃぎまくって、給付金のことなど頭からすっかり抜け落ちているみたいです。まあ、もともとあまり容量の大きくない頭みたいですから無理なことは要求しますまい。
という訳で言い出しっぺでない私が率先して我が家の使い方をご報告します。家内はゴルフのスコアアップのために、オーガスタで片山晋呉が使用していたパターの購入に当てるとのことです。息子は通学のための自転車を購入。娘は何回かに分けて友人と美味しい物を食べに行くということです。それぞれスポーツ用品業界、地元商店街、飲食業にささやかな貢献ができます。
私は以前のコラムにも書きましたが、当初はネオン街の振興のためにキャバクラに行こうと思ったのですが、友人から12,000円ではとても遊べないと諭されたので、大いに悩んでしまいました。何に使えばこの給付金の目的である景気浮揚に僅かながらでも貢献できるのだろうかと熟慮した結果、来るべき総選挙に地元選挙区から新人として立候補する江端貴子さんへ政治献金することにしました。
江端さんは富士通社員として社会人を経験された後、フルブライト奨学生としてマサチューセッツ工科大学経営大学院に留学しMBAを取得。その後マッキンゼー&カンパニーなどで活躍されました。ところが、親御様の介護のために退社されました。この時の経験が政治の道を志すきっかけになったそうです。東京大学の特任教授を務めた後、現在は某製薬会社の社外取締役をされています。
温厚で控えめなご主人(同じくアメリカでMBAを取得)との間にご子息を設け、良き家庭の主婦、母親でもあります。爽やかで気取りのない人柄、まさに「才色兼備」を地で行く素晴らしい女性です。
さらに私が彼女を支持するもっと大きな理由は、江端さんが政治家としてなしたいと考えている分野が教育と社会福祉だということです。社会福祉は医師である私が無関心でいられるところではありません。また江端さん同様私も常々、資源のない日本が何を差し置いても力を注がなければならないことは教育であると考えていたからです。
もともと頂きたいなどと期待していなかった12,000円です。東京10区において、4年前、小泉の威を借りた刺客と称して、唐突にこの地に現れた女性風見鶏政治家に代わって、教育と福祉に心血を注いでくれる清廉高潔な政治家、また当たり前の家庭人としての常識をわきまえた政治家を選出する一助になるならば、必ずや将来における我が国の発展に結びつく、定額給付金のもっとも有効な使い道だと考えました。ただし、政権与党にとっては甚だ不本意な使われ方だと思います。麻生さん、太田さん、ごっつあんです。

その日の生活に困っておらず、なおかつ未だこれといった使途を決めかねている方は、是非とも私のように、自分が信頼する政治家へ献金してみてはいかがでしょうか。我が国は企業の献金ばかりで、本来あるべき政治家への個人献金が浸透していません。こういったことも政治の腐敗を生む温床になっています。
天下の愚策、定額給付金を逆手にとって、政治をもっと身近なものにする絶好のチャンスかもしれません。する絶好のチャンスかもしれません。

ナルコレプシー(Narcolepsy)

先日のコラムで睡眠障害のむずむず脚症候群を取り上げましたが、今回も同じように特殊な睡眠障害の一つであるナルコレプシー(Narcolepsy)についてお話します。
この病気はきわめて奇妙な症状を示すので、小説や映画のストーリーの展開を面白くさせるために、登場人物をこの病気にかからせたものが幾つもあります。
小説の分野で有名なのは作家の色川武大です。色川は彼自身が本当にこの病気に悩まされていました。ですから、自身の実体験を基にナルコレプシーが絡みの小説を数多く書いています。映画では新海誠監督の「雲の向こう、約束の場所」やガス・ヴァン・サント監督の「マイ・プライベート・アイダホ」にナルコレプシーを患ったキャラクターが登場します。この他、漫画のキャラクターにもこの病気で悩むキャラクターは数多く取り扱われています。
ではエンターテナーたちが好んで取り上げるこの病気の興味深く、特徴的な症状とはどんなものなのかというと、以下に示す4つの症状です。
1. 睡眠発作:昼間、リラックスしているとか緊張しているとかいった状況と無関係に突然発作的に睡眠に入ってしまいます。耐えがたい眠気に抗しきれず短時間眠ってしまうことが多いですが、「眠たいな」という前兆が明瞭ではなく、瞬間的に眠りに入ってしまうこともあります。そういう場合には、てんかんの意識消失発作に間違われることがあります。
2. 睡眠麻痺:俗に言う金縛りです。いったん寝入ってしばらくしてREM睡眠に移行する際、正常なREM睡眠に入れないで意識だけが覚醒してしまいます。それなのに身体の筋肉の方は依然としてREM睡眠の状態のままでピクとも動けない状態です。目の周りの筋だけは動かせますから、頭は冴えてメモきょろきょろできるのに四肢を動かせない、本人にとってはとても怖い状態になります。
3. 眠時幻覚:寝入りばなや起きかけの時、すなわち睡眠状態と覚醒状態との移行期に、明瞭で、非常に現実的な幻聴や幻視が起きます。ついさっきまで生活していた状況から乖離しない現実的な幻覚です。例えば、実際に隣で寝ている配偶者が自分の名前を呼ぶといった幻聴です。また、昼間に起きる睡眠発作の際にも見られますから、幻覚と現実の区別が困難なことが多いようです。
4. 情動脱力発作(カタプレキシー):怒り、笑い、悲しみなどの強い感情が湧きあがった際にレム睡眠の時のように骨格筋の脱力が起こります。情動のうち、喜び、愛、幸福感といった陽性の感情の方がこの発作を引き起こしやすいようです。このために笑った途端にへなへなと倒れ込んでしまったり、へなへなと崩れ落ちてしまったり、呂律が回らなくなったりします。この間患者さんの意識はしっかりしていて、起きたことをすべて覚えています。すぐに回復し、長くても数分以内に収まる場合がほとんどですが、「あっ、いけない、早くしっかりしなければ」と焦って緊張するとかえって発作を繰り返しやすくなります。
以上が4大症状と呼ばれる特異的な症状ですが、この他、次ぎの2つの症状もよく見られます。しかし、この症状はナルコレプシーだけに見られるわけではありませんから診断の決め手にならないことは覚えておいてください。
5. 自動症:眠った感覚がないにもかかわらず、直前に行った行為の記憶が無くなっている状態です。言い換えると無意識に眠ってしまって、眠っているのに行動を続けている状態と言えます。昼間の睡眠発作と一緒に起こると、それまでしていた単純な行動を継続します。例えば歩き続けるとか、食べ続けるとかです。周囲から見れば眠っているとは見られませんが、本人はある一定時間の記憶が抜け落ちています。また、基本的に眠っているので単純なことはできますが複雑なことはできませんし、ミスをします。したがって、会社の上司や同僚から不真面目、あるいは注意不足で失敗が多い奴という誤ったレッテルを張られていることがあります。この症状自体はてんかんの一種でも見られます。
6. 中途覚醒や熟眠困難型の不眠:夜間REM睡眠の時期になるたびに頻回に覚醒し、その際に睡眠麻痺が、また、その前後に幻覚が起きるために一晩ぐっすりと眠ることができません。ただし。この手の睡眠障害は統合失調症やうつ病といった精神障害の際の症状としてもポピュラーです。ですから、これだけでナルコレプシーの診断を付けることはできません。

さすが小説、漫画、映画で取り上げられるだけのことはある興味深い病気で
すが、実際に周囲を見回してみるとそう滅多にはお目にかからない病気なのではないでしょうか。
我が国に実際どのくらいのナルコレプシーの患者さんがいるのかについての確定的な数字はまだ出されていません。推測では0.16~0.18%の有病率といわれています。つまり、1,000人に2人以下ということになります。
それほど患者さんが多くなく、しかも命にかかわることは滅多にないので、一般の人に名前が知られている割に医療現場ではそれほど話題にならない病気でした。
ところが一昨年のリタリン(塩酸メチルフェニデート)の騒ぎでリタリンとともに一気に開業医の間においても話題になりました。なぜならば、リタリンを求めるナルコレプシーの患者さんが医療現場を放浪し始めたからです。
一部医療機関による無軌道な処方によってリタリンの濫用、依存が社会問題となって、結局はリタリンの保険適用がこのナルコレプシーの治療だけに限定されてしまいました。国と製薬会社がリタリンの処方を免許制にして、処方できる医師を制限して管理下に置くことになりました。それなのに、国も製薬会社もどの医師がその免許を持っていて、どの薬局に置いてあるのかを一切公表しません。これは実質的には管理ではなくて一方的な統制です。それまでリタリンの治療を受けていた患者さんでも、主治医がリタリン取扱の許可を受けなかった場合、そこではもうリタリンを処方してもらえなくなりました。新しい主治医を見つけようとしても、どこに行けばよいのか分からずに途方に暮れた患者さんが手当たり次第に医療機関を訪ねたのでした。
一部の心ない医療機関と薬物依存者たち、そして無責任な国、製薬会社のお陰で、本当にリタリンを必要としている人達がとんだとばっちりを受ける結果になりました。今はやっとこの混乱状態から脱して、それぞれ新しい主治医を見つけられたようです。
この病気の確定診断のためには夜の睡眠状態と昼間の眠気を自己評価する睡眠表を自己チェックして、終夜睡眠ポリグラフ検査、睡眠潜時反復検査を行います。
しかし、すべての症状や検査結果が陽性所見を示さない場合、つまり典型的なナルコレプシーではないがナルコレプシーの類縁疾患と思われるケースも多数あります。こういう方はやはりナルコレプシーに準じた治療が有効ですが、前にお話ししたように治療薬の取り締まりが厳しいためになかなか適切な治療を受けられない状況です。
原因はいまだ不明ですが、オレキシンという物質がこの病気に関連しているという説が注目されて研究が進められていますが、未だ確定的ではありません。
さて、問題の治療薬ですがリタリンが特効薬ですが、この他に最近モダフィニル(モディオダール)が発売になりました。さらに昔からペモリン(ベタナミン)という薬が適応になっていますが、これは肝臓に対する毒性が強い割に作用が弱すぎてあまり実用的ではありません。
以上の3つの薬は昼間の睡眠発作やカタプレキシーに有効ですが、睡眠中の睡眠麻痺、途中覚醒、熟眠困難などに対しては抗うつ薬が有効です。

リタリンが社会問題となって、リタリンは依存性が強くて覚せい剤と似ていて怖い薬という社会通念ができてしまいました。このために、これまで少量のリタリンで円滑な社会生活を行うことができていたナルコレプシーの患者さんの中にも、「知らないで怖い薬を飲まされていた」と怯える人が出てきました。
しかし、心配することはありません。どうしたものか、必要もないのにリタリンを濫用している人は短期間で耐性、依存性が形成されますが、本来リタリンが有効な患者さんは耐性も依存性もつきにくいのです。大変不思議なことです。

金一派と強欲資本家とは同じ穴の狢

4月5日午前11時半頃、世界中が注目していた北朝鮮のロケット発射実験が行われました。心配されていた誤射や残骸等落下物による我が国の被害もなく飛翔体は太平洋上へと飛び去っていきました。北朝鮮にとっては勿論のこと、我が国にとっても御同慶の至りと言えましょう。
先日のコラムにも書きましたが、今回のロケット発射実験は先端部分が弾頭なのか人工衛星なのかという点が大問題となっていました。日本をはじめ世界の多くはアメリカ本土を射程に入れたミサイルの発射実験だと推測していましたが、北朝鮮は頑なに人工衛星であるとの主張を押し通してきました。
打ち上げ直前になって、アメリカの軍事衛星の撮影した写真の解析から、アメリカの軍事情報機関が、ロケットの先端部分の形状から見て、今回の打ち上げが本当に人工衛星である可能性を示唆しました。
しかし、長らく四海困窮が続いて、路上に行き倒れを目にすることが日常茶飯事の国が、本当に人工衛星を打ち上げるとは俄かには信じられません。もし北の為政者たちが僅かでもまともな神経を保っているならば、玩具みたいな人工衛星を飛ばす資金で餓死者の数を幾分かでも減らす努力をすると思うからです。
よしんば先端部分に人工衛星が搭載されていたとしても技術レベルが低いために正常に発射できない可能性があります。その場合には軌道の直下に当たる我が国へ落下してくる可能性があります。さらに、北朝鮮のロケット燃料はきわめて毒性の高いヒドラジンという液体を使っていますから、その際には落下による人体への被害が広範囲に及ぶ可能性が懸念されていました。
と言う訳で、頭上を危険一杯の飛翔体で脅かされる我が国にとっては傍観してはいられない有事の出来事となったのです。また、ロケットが弾道ミサイルであれば、国境を接して軍事的緊張状態の続く韓国にとっても、また本土がミサイル射程内となるアメリカにとっても由々しき問題であります。このために、三国は共同して発射を思いとどまるように外交努力をするとともに、危険と判断した場合にはロケットあるいはその一部を破壊すべく、ミサイル防衛システムを使った迎撃態勢を敷きました。
中でも日本は国民から総すかんを食っている麻生政権が、この外患を支持率回復のための起死回生のイベントにしようと考えたようです。勇ましく迎撃を宣言し、迎撃ミサイル隊の移動場面や配備場面をこれ見よがしにマスコミに流しました。
でも、麻生さん一流の大見栄を切っては見せましたが、本当に我が国に落下物が飛来したらどうしたものかと、内心は薄氷を踏む思いであったに違いありません。
なぜならば先日のコラムでも書きましたように、打ち上げ直後にはその飛翔体が人工衛星なのかミサイルかの判別が極めて難しいからです。飛翔物体がミサイルであることの確証を示せないままに撃ち落としてしまっては、いくら相手が名うてのごろつきであったとしても、一方的な敵対行為との誹りを免れません。実際に北朝鮮は、もし迎撃すれば宣戦布告と見なすという旨を表明しました。ですから、日米は飛翔体がミサイルであり自国に危険であるという確かな証拠を示さないと、より悲惨な戦争に突入する恐れがありました。そこで、飛翔体がミサイルだとしても、発射を失敗して本体もしくはその一部が日本国内に落下する場合にのみ撃破するという方針にトーンダウンしました。
しかし、ミサイル迎撃システムは正しい軌道で攻撃してくる飛翔体を迎撃することは可能ですが、ふらふらと迷走する欠陥ロケットや破片を撃ち落とすことは技術的に極めて困難です。
そんな訳で、麻生さんが最も望んでいたシナリオは、発射を中止すること。もし直前で発射中止となれば、自分の威勢の良さと日米のミサイル防衛システムが発射を抑止したと宣伝できるからです。
次善のシナリオは正常に発射されて無事に日本領空を飛び去ってくれること。最悪のシナリオはロケット本体あるいはその一部がふらふらと落下してくることでした。そうなれば、それを迎撃ミサイルで撃ち落とすという、かなり確度の低い作戦を成功させて見せなければならなくなったからです。だから、今回の発射が曲がりなりに成功したことを金正日の次に喜んでいるのは麻生さんかもしれません。
でも実際には日本は今回の騒動で相当にマイナス評価を喰らいました。ミサイル迎撃能力以前の危機管理体制の不備が露呈してしまったからです。前日に政府はミサイル発射の誤報を流してしまいました。しかも1度ならず、2度に渡ってです。これでは北朝鮮のミサイルの精度がどうのこうのと批判しているわけには参りますまい。

他人に金品を無心することを「ゆすり、たかり」と言いますが、「たかり」は単なるおねだりですが、「ゆすり」はれっきとした犯罪です。北朝鮮はこれまでも国家ぐるみで「ゆすり」を続けてきました。「国が貧しくて国民が飢え死にする。このままでは多くの難民が貴方達の国へ流入するか、さもなくば一か八か、戦争に打って出るしかない。」とのゆすり文句で多額の援助を受けながら、それを国民には与えず私腹を肥やす一方、さらなる「ゆすり」の材料としての武器生産に当てる。これが金正日一派の「盗人に追い銭」を地で行く山賊商売の常套手段でした。
ロケット打ち上げを成功裏に収めた北朝鮮がさらに強硬な「ゆすり」に出てくることは火を見るより明らかです。これからは「金や重油をよこさなければ核爆弾を積んだミサイルをお前の国に落とすぞ。」と言ってくるのです。
なんとも理不尽な話ですが、同じような手口を別な場面でも観ました。それは北朝鮮を「ならず者国家」と非難したアメリカにおける出来事です。

アメリカではメリルリンチやAIGなどの米国金融資本家がマルチ商法まがいの金融商品で帳簿上の利益を創って見せて、現実の金の形で高額の報酬を掠め取ってきました。この詐欺商法が破綻するや、慇懃無礼に「ちょっとした手違いがあったためにご迷惑をおかけしますが、私達を潰すと国民の被害がもっと大きくなりますよ。」と脅迫して、国民の税金をまんまとせしめました。まっとうな人であるならば、これまでのやり方を悔い改めて金融再建に専心する筈です。ところが彼等は民から目仕上げた金を自分たちの報酬に充てた上に恥じることがありません。これでは言葉遣いが丁寧なだけで、北の金一派の行為と大同小異です。アメリカはこれまで北朝鮮政権を「ならず者国家」と声高に非難してきましたが、自分たちも同じ穴の狢であることを露呈してしまいました。

今世界に垂れ込めている暗雲の源を辿ると、飽くなき物欲に捕われた一部権力者たちの道徳の欠如あるいは恥知らずに行き着くように思えます。
地球が無限の広さをもっていると信じられていた大昔ならばいざ知らず、数10分でミサイルを応酬し合える程度の小さな惑星であることが分かっています。これからの時代、世界中の人々に「知足安分」の訓えを啓蒙し、それに背く行為を「恥」と感じる感性を育成することが急務ではないでしょうか。
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