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クリニック西川

2007年3月

睡眠障害(その5)中途覚醒

いったん寝付いても朝まで睡眠が持続できないで、夜中に目が覚めることを中途覚醒と言いますが、寝る直前に水分をたくさん摂れば、排尿のために目が覚めることは不自然ではありません。

お漏らしという緊急事態を回避するために膀胱の緊迫した状態を脳がキャッチして、覚醒を促す生理的な現象です。しかし、いくら寝しなに水分をとったとしてもいったん排尿すれば、もう一度ベッドに戻れば、大抵は朝まで眠れるはずです。

睡眠の途中に2回以上目が覚めるものを中途覚醒型の睡眠障害と言います。途中で目が覚めても、すぐにまた眠れる人もいれば、なかなか次の眠りに入れない人もいます。

このタイプの不眠は睡眠覚醒のリズムを生み出す脳の仕組みそのものの不調が原因でおきる場合のほか、実にさまざまな原因でおきます。例えば、種々の病気に起因する身体のあちこちの痛み、喘息などによる呼吸困難や咳、消化器系の病気による腹痛、前立腺肥大症によって高頻度に起こる夜間の頻尿などです。

また、睡眠薬代わりに寝酒する人は少なくありませんが、少量のアルコールという薬物は寝つきをよくしますが、大量に長期にわたってアルコールを睡眠薬の変わりに飲み続けているとREM睡眠と深いNREM睡眠を減らしてしまうために、浅い睡眠ばかりになってしまい、しばしば中途覚醒を起こします。

以上のような外からの要因で起きてくる中途覚醒はその原因である病気を治療したり、原因となっている薬物を避ければよいのですが、この型の睡眠障害は睡眠・覚醒をつかさどる脳の機構の本格的な失調の表現であることが多いのです。

中途覚醒方の不眠は単独に起こるばかりでなく、前に述べた入眠障害と組み合わさっていろいろな精神的な病気の部分症状としてしばしば見られる症状で、寝つきが悪いだけの入眠障害と違って、必ず専門医に診てもらいましょう。

精神的な病気の部分症状ではないものの中に、最近注目を浴びているものは睡眠時無呼吸症候群(SAS)があります。この病気は睡眠中に10秒以上にわたって呼吸が止まる(無呼吸)の状態が1時間に5回以上みられる場合に診断されます。

すなわち、深い睡眠に入ろうとすると呼吸が止まってしまうために息苦しくなって目が覚めてしまうために、一晩中深い睡眠に入れなくなります。したがって、全体として一晩に6~7時間眠ったとしても常にうとうとしたような浅い睡眠でしかないために、昼間に眠気がさしてうとうと居眠りばかりして、上司に叱責されるという事態に陥ってしまいます。

睡眠時無呼吸症候群は本人が息苦しさを翌日に覚えていないために、自覚的には昼間の眠気だけしかないことが少なくありません。もっとたくさん寝ようと早くからベッドに入る努力をしても、睡眠の質が不良なためにいくら長時間寝ても昼間の眠気は改善されません。

幸なことにベッドを一緒にしてくれるパートナーがいれば、ひどいいびきや呼吸が長時間停止することに気付いてくれるために、早期にされることになります。

意外と知られていないが決して少なくない中途覚醒型の不眠に周期性四肢運動障害(PLMD)という病気があります。この病気はSASと同様に、深い眠りに入ろうとすると周期的に反復する瞬間的に現れる手足、特に下肢の運動です。

つまり、まどろみから深い睡眠に移行しようとすると足がピクンと動いてしまうのです。このために深い睡眠に入れずにSASと同様に昼間の眠気となって現れます。本人が余り自覚しないで、パートナーによって気付かれることもSASと似ています。原因は良く分かっていませんが、治療薬はあります。

睡眠障害(その4)入眠障害

さあ寝ましょうと思ってベッドに入っても、なかなか眠りにつけない、寝付くまでに時間がかかる症状を入眠障害と言います。

寝床に入ってから実際に眠るまでの時間を睡眠潜時といいますがこの潜時にも個人差があるようです。倒れるようにベッドに入り、ふとんを被るやいなやいびきをかきだす人もいれば、しばらくの間もそもそと自分の一番快適なポジションを探しているかのように動きまわってから眠る人もいます。

多くの人は睡眠体勢に入ってから30分以内で眠りに就きます。長くかかる体質の人でも1時間以内には眠れます。ところが、何らかの原因で入眠が障害されると1時間以上かかってもベッドの中でのたうちまわることになります。

その日の昼間に上司にきつく叱責されるような、とてもいやな目に遭った晩。これとは、逆に念願かなって何かの大会で優勝したような歓喜覚めやらぬ晩。翌日、一世一代の大商談をひかえた晩。こういった夜は精神的な興奮度が高まっていますから、寝付くまでの時間が延びてしまうのも当然です。

たいていの場合にはその晩の睡眠時間が足りなければ、翌晩にぐっすり眠って前の晩の睡眠不測を取り戻してしまいます。ですから、次の日に多少眠気を感じても昼寝をしないで活動することをお奨めします。下手に、健康のためには寝なければいけないと誤った判断をしてたっぷりとお昼寝をとってしまうと、次の晩もまた、なかなか寝付けなくなってしまいます。

こういったことを繰り返していると、前にお話した不眠→お昼寝→不眠→お昼寝の悪循環に陥ってしまいます。地球の自転に合わせた一日のリズムを狂わさないように努めることが肝心です。

いま述べたような一時的な入眠障害の特殊なものとして時差ぼけがあります。1,2時間の時差は身体のほうでうまくキャンセルしてしまいますが、時差が6時間以上にも達する海外旅行では前にいた場所の一日のリズムに体が適応してしまっているために新しい土地のリズムに慣れるまでには2,3日かかることがあります。

時差による影響は東方向への移動の際に強く現れますから、アメリカ旅行では往った時が、ヨーロッパ旅行では帰ってきた後に苦しむことになります。

入眠が困難な晩が週に3晩以上で3週間以上続くと、本格的な不眠症の仲間入りとなります。寝つきが悪いという入眠障害は中途覚醒、熟眠感が得られないタイプの不眠や早朝覚醒型の不眠に比べて最も頻度の高い症状です。また、他のタイプの不眠と組み合わさって起きてくることも少なくありません。

原因は実にさまざまで、原因によって治療方法も異なってきますから、長期にわたって寝つきの悪い方は市販の薬を買うよりも、まずは専門医を受診することをお奨めします。

睡眠障害(その3)不眠

不眠とはなかなか寝付けない、早く目が覚めてしまってその後まんじりともしないで朝を迎えてしまう、睡眠の最中に何度も目が覚める、眠りが浅い、夢ばかり見ている、朝起きた時にぐっすりと眠った満足感が得られない等々、睡眠の量や質を本人が不満足で困っている状態です。ですから、不眠の原因は実にさまざまで、本人が困っているだけで、医学的に見たらなんら心配の要らない場合もあれば、すぐに治療をしたほうがよい場合もあります。

夜中に大地震が起きた際には直ちに覚醒して、日ごろ訓練した避難行動をとらなければなりません。このような緊急事態であっても目を覚ますことなく、ぐっすりと眠っていたら大変なことです。しかし、実際にはそのようなことはありません。自分を取り巻く環境に非常事態を告げる知覚を脳が感じとった場合には睡眠は直ちに中断されて覚醒状態になります。

以前にもお話しましたように、睡眠は死に似た状態ではなく、脳の活発な活動状態です。緊急事態を知覚したにも係わらずに起きてこない人は眠っているのではなく、病的な意識障害を起こしている人です。意識障害とは脳の活動が低下した状態で死へと向かっていく下り坂の状態です。睡眠とは似て非、まったく異なるものです。

夜中の大地震はそんなに頻繁に遭遇するものではありませんが、しかしリラックスした状態を妨げる環境であれば快適な睡眠を得ることができません。地震や工事などで発生する振動。消防車や救急車のサイレンなどの大きな音。先日、判決を受けた迷惑おばさんの発するような騒音を受けたことには眠れっこありません。異常な室温や急激な温度変化。腹痛や頭痛といった痛みの刺激。極度の空腹感や満腹感も寝入るためには妨げになります。もう少しデリケートな環境上の問題としてはいわゆる「床が変わる」というものもあります。旅行や入院などで慣れない部屋で、使い慣れない寝具を使用すると神経質な人だと眠れなくなることがあります。

こういった、環境が原因で充分な睡眠をとることができない場合にも睡眠導入薬を服用するという方法も一時的には有効ですが、根本的解決は不眠の原因となっている環境を改善することです。すなわち、地震は別として振動の原因や騒音の除去あるいは防音対策。寝具を工夫したり、エアコンで適度な室温を保つ。痛みを引き起こす病気を一刻も速く治療する。適切な時刻に適切な量の夕食を摂る。こういった対策でぐっすりと眠ることができるようになります。床変わり対策はちょっと難しいかもしれませんが、普通は数日で新しい睡眠環境に順応しますから、慌てないでも大丈夫です。旅行先にMy枕を持参する方もいらっしゃいますが、ちょっと周囲の笑いをとることは覚悟してください。

不眠を訴える方の中に時々見かけるケースとして昼寝のとり過ぎがあります。「ここ何ヶ月も毎晩眠れない」とおっしゃるのですが、よくよく聞いてみると夜、眠れないからといって昼間たっぷりとお昼寝をしていらっしゃるのです。身体が要求する一日の睡眠は限度があります。昼間に充分な睡眠をとってしまえば、身体としては夜眠る必要がありませんから、当然眠くなりません。ところが、御本人は夜眠れないからといってまた次の日もたっぷりとお昼寝をする。この繰り返しです。

対策としては夜ぐっすり眠るかお昼寝を止めるかですが、下手をすると「鶏が先か卵が先か」論争になってしまいます。しかし、こういう場合はお昼寝をやめるべきでしょう。なぜならば、努力して眠ることはできませんが、起きていることは頑張ればできるからです。

努力して不眠になる方もいらっしゃいます。「充分に眠らないと翌日に差し支える」、「不眠は健康に差し障る」「なんとしても速く眠らなければならない」と頑張ると、かえって寝付けなくなってしまいます。人の入眠(寝付くこと)は横になる以外何もしないという状況下で円滑に作動するようにできています。「眠ろう」と努力をした瞬間に眠りにくい状況を作り出してしまうのです。

まだ何も偏見やこだわりを持たずに生きていた幼い頃を想いだしてください。親から「いつまでテレビ観てるの。早く寝なさい」と叱られた経験をお持ちの方は少なくないと思います。眠らずにいつまでも起きて、遊んでいたい。明日のことなんて考えてもいませんでした。自分の身体があるいは親が眠れと要求してくるのでいやいや眠ったのです。あの頃が健康な心理だったのです。

この不健康な心理状態に由来する不眠は現代の健康ブームに通ずるように思います。テレビの健康関連番組で「これが身体に良い」と放送されると、名指しされた食品、目の玉が飛び出るような値段のサプリメントと称する化学物質、得体の知れない動植物からの抽出物質などが飛ぶように売れます。テレビは次々にテーマを変えますから、記憶力のよい方は次から次へと購入する健康食品が増え、やがて食事よりも大量の物質を飲まねばならなくなります。

さすがに一時代スターの座を獲得した紅茶茸の御尊顔はついぞお見かけしなくなりましたが。自分の健康への過度の拘りはそれ自体とても不健康な心理状態なのです。

幼い頃からきちんとした食育を受けた人間の身体はちゃんとそのときに必要な栄養素を食欲を通して教えてくれるものです。身体が発するこの要求を素直に感じとっていればバランスの取れた食事ができると思うのですが、いかがなものでしょう。

睡眠障害(その2)睡眠障害

生理的な睡眠時間には個人差があることはお話しましたが、睡眠時間は年齢によっても異なります。生れて間もない赤ちゃんはお腹が空くと目を覚まして不機嫌に泣いてミルクを要求します。ミルクを飲んで満足すると束の間はご機嫌にしていますが、やがて眠ってしまいます。つまり、一日の大半睡眠状態にあります。

成長と共に身体が必要とする睡眠時間は減り、成人期になると一日の2/3程度は覚醒しているようになります。加齢が進み、老年期に達するとさらに必要睡眠時間は減り、早く目が覚めるようになります。

お年寄りはしばしば「朝早く目が覚めて困る」と嘆きますが、見方を変えれば起きていられる時間、つまり活動できる時間が長くなるのですから、それまでに蓄えてきた経験を活かして社会に貢献する仕事をされることをより一層励まれることをお勧めします。そうやって社会とのかかわりを持ち続けることが心身、特に心の老化を防止して、認知症にならないための有効な対策でもあります。

社会も高齢化を憂うばかりではなく高齢の方にその年齢にあった活躍の場を提供して活躍していただくことを考えたほうがよいと思います。高齢者とは人が勝手に年齢から分類した時期です。心に関しては自分が「年をとったな」と考え始めた時から老化が始まるといってもいいでしょう。

70歳を過ぎても素晴らしい感性を持ち、豊富な経験から、多くの人の役に立つ能力を持った若々しい方もいれば、20歳そこそこでも硬直した考え方しかできず、物事をあるがままに感じる能力に欠けて、周囲の人と常に摩擦を起こす老化した心の持ち主もいます。

さて、生理的な睡眠活動にくるいを生じた状態をすべて睡眠障害と言います。

睡眠障害の中では「眠れない」不眠症が大多数を占めますが、逆に「眠りすぎる」場合、つまり過眠症もあります。この他に近年問題になってきた睡眠障害に睡眠相(眠る時間帯)がずれてしまう病気があります。具体的には遅寝・遅起きになってしまい、出勤時刻に間に合わないために、通常の社会生活が営めなくなってしまうのです。特殊な病気としては昼間、活動中に突然眠ってしまう睡眠発作が特徴的なナルコレプシーと言うものもあります。

以上お話した睡眠障害は睡眠の量や出現時間帯の異常ですが、睡眠の質が悪くなる病気もあります。睡眠の質を客観的に知るには眠っている間の脳波を測定するなどのややこしい検査をしなければなりません。したがって、自覚症状だけから簡単に見つけ出すことができません。睡眠中の脳波をみると、レム睡眠、ノンレム睡眠(オルソ睡眠とも言う)の出現量、睡眠の深さ、レム睡眠の出現パターンなどを知ることができます。

そういった指標を分析すると一見ちゃんと眠っているように見えても実は不健康な睡眠であることが判明する場合があります。睡眠の質が悪いと昼間に睡魔に襲われたり、集中力を欠いたりといった現象が現れます。

夢についてはフロイトの夢分析が有名です。しかし、「長い突起状の物は男性器の象徴で、そういう物が登場する夢をよく見る女性は性的に欲求不満である」といった解釈は、お話としては面白いかもしれませんが、あまりにも安易な解釈ですし、科学的実証性が乏しく、今やあまり信じられていません。しかし、うつ状態の方の夢は恐怖を伴う内容だったり、焦りを感じる内容であることが多いようです。夢は何らかの形で脳の活動状態を反映していると思われますが、詳しいことはまだよく分かっていません。

将来、脳の活動状況をダイナミックに、しかも痛みなどの侵襲を伴わずに知る方法が確立すれば夢を初め、睡眠中のさまざまな事柄に関する新発見がなされると期待しています。

睡眠障害(その1)そもそも睡眠とは?

人は人生の約1/3から1/4を睡眠状態で過ごします。
つまり、60歳まで生きるとすれば、約20年間は眠っていることになります。眠りとは見ためが「死」や「意識障害」と似ているために私たちの人生の負の部分のように思われがちです。このことは死のことを「永遠の眠り」と表現することからも分かりまパニック障害の主な症状は、不安、動悸、息苦しさです。
きちんと呼吸できているにもかかわらず、息苦しく感じるために、必要以上に呼吸をしてしまい、過呼吸発作を起こすことが少なくありません。
パニック障害という病名が広く認知されたのは最近のことです。それまでは不安神経症の中に組み込まれていました。したがって、患者さんに対する対応も今とはかなり違っていました。「襲ってくる不安を自分の力で克服しなければいけない。」という考えが根底にありました。しかし、パニック障害に対する研究が進んで襲ってくる不安が、本人の不心得からくるものでないことが分かってきました。自分の力ではどうにもならない不安なのです。
実はパニック障害は脳という臓器の代謝障害なのです。
糖尿病などと同じ病気なのです。
不安に関係のあるノルアドレナリンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質(ニューロトランスミッター)の分泌機能が正常に働かなくなっているのです。こういった脳内伝達物質は気分、意欲という精神機能にも深く関与しています。ですから、気分や意欲の病気である、うつ病と深く関連していることも分かってきました。
治療は脳の神経伝達物質の分泌を調整するお薬を呑むことです。
SSRIというグループの抗うつ薬がパニック障害にも効果があります。その理由は先程述べた病気のメカニズムを考えれば不思議ではありません。ただ、このグループの薬の効果は飲んですぐに現れませんので、対症療法薬として不安を即効的に弱める抗不安薬(マイナートランキライザー)も併用するほうがよいようです。
薬物療法とあわせて精神療法も重要です。
パニックを起こしやすいライフスタイルを変えたり、不安との付き合い方を学ぶことでその後の再発を予防できるからです。
しかし、最近の研究によれば眠っている時の脳は起きている時に勝るとも劣らない位に活発な活動をしていることが分かってきました。すなわち、睡眠とは人生の1/3~1/4の時間を占める脳の活動状態の1つの型です。例えて言えば、眠りは人生の楽屋と言えます。楽屋ですから人目につかず、とかく忘れられがちです。
しかし、華やかな舞台の上の活動がうまくいくかどうかは裏方さんたちの隠れた働きによるところが多いのです。事実、エネルギーの素であるブドウ糖の消費量は覚醒しているときよりも眠っているときのほうが多いのです。眠りは「死」なんかとまったく異なり、脳が猛烈に活動している状態なのです。数分の夢の中で一生にわたるくらい長期間の体験をすることがあります。ブレーキが解き放たれて、脳が自由に動き回っているのでしょう。
植物も昼と夜とでは代謝系が違いますし、時間帯に応じて特殊な動きを見せる植物もありますが、あくまでも受動的な動きであり、ひとの能動的な眠りとは異なります。眠りは脳の進化とともに発現する活動です。昆虫や軟体動物でも眠りと思われる現象は見られます。魚類では脳波から睡眠状態を確認できます。
人における必要睡眠時間にはとても個人差が大きいようです。4時間くらい眠れば充分なショートスリーパー(short sleeper)もいれば10時間眠らないと調子のでないロングスリーパー(long sleeper)もいます。また、同じ個人でも環境に応じて眠りの時間が違ってきます。脳の温度が下がりにくい夏は短い眠りしか取れません。逆に初冬は長い眠りになります。女性は性ホルモンの影響を受け、黄体期は卵胞期より長い眠りを要求されます。睡眠は眠る時間帯によってもその質が異なります。人は元来昼行性の生き物ですので、体のあらゆる機能が夜眠ったほうが上手くいくようにできています。ただし、この最適時間帯にも個人差があり、早寝早起き人「ひばり型」と、遅寝寝ぼすけの人「ふくろう型」がいます。しかし、どんなに遅寝が得意な人でも翌日になる前(午前0時を過ぎないこと)には就床したほうがよいようです。
一晩の眠りはNREM睡眠とREM睡眠という2種類の睡眠によって構成されています。この2つの眠りは周期的に交代して現れます。NREM睡眠はいわゆる穏やかな眠りで、REM睡眠は夢を見る睡眠です。第1回目のREM睡眠は寝付いて90分後くらいにやってきます。その後明け方になるにしたがって頻繁に現れます。REM睡眠の間は夢を見るだけでなく、自律神経系が乱れます。突然死が明け方に多い理由はこのことによります。
夢、すなわちREM睡眠は脳がある程度進化しないと現れません。今までの研究によれば、鰐や蜥蜴のような変温動物の脳波にはREM睡眠は見られません。恒温動物の脳になってようやくREM睡眠が認められるようになります。大人の人の眠りのパターンと同じような脳波パターンは猿の仲間にしか見られません。人に限っても若い時には夢をたくさん見ますが、加齢とともに夢を見る眠りは減ってきます。
睡眠・覚醒のリズムを作っている機構は脳の中にある体内時計です。ところが、ひとの体内時計は地球の自転に一致しておらず、放っておくと25時間強の周期で時を刻みます。したがって、私たちは普段よりも早寝をするのは苦手です。普段は地球の自転に適応して帳尻を合わせていますが、本来は夜更かしし易いようにできているのです。隙あらば夜遊びしたがるのは体内時計のせいのようです。
このようにスケジュールが遅れることには適応しやすいので、飛行機旅行の際に生じる時差ぼけは、太陽を追いかける西回りの方が現地の時刻に早く適応できます。パリに行った場合、パリでは比較的容易にパリ時間に体が慣れるのに、日本に帰国してからの方がなかなか日本の時間に戻れないのはこのためなのです。世界一周されるときには西へ西へと回る旅をお奨めします。

パニック障害について

パニック障害の主な症状は、不安、動悸、息苦しさです。
きちんと呼吸できているにもかかわらず、息苦しく感じるために、必要以上に呼吸をしてしまい、過呼吸発作を起こすことが少なくありません。
パニック障害という病名が広く認知されたのは最近のことです。それまでは不安神経症の中に組み込まれていました。したがって、患者さんに対する対応も今とはかなり違っていました。「襲ってくる不安を自分の力で克服しなければいけない。」という考えが根底にありました。しかし、パニック障害に対する研究が進んで襲ってくる不安が、本人の不心得からくるものでないことが分かってきました。自分の力ではどうにもならない不安なのです。
実はパニック障害は脳という臓器の代謝障害なのです。
糖尿病などと同じ病気なのです。
不安に関係のあるノルアドレナリンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質(ニューロトランスミッター)の分泌機能が正常に働かなくなっているのです。こういった脳内伝達物質は気分、意欲という精神機能にも深く関与しています。ですから、気分や意欲の病気である、うつ病と深く関連していることも分かってきました。
治療は脳の神経伝達物質の分泌を調整するお薬を呑むことです。
SSRIというグループの抗うつ薬がパニック障害にも効果があります。その理由は先程述べた病気のメカニズムを考えれば不思議ではありません。ただ、このグループの薬の効果は飲んですぐに現れませんので、対症療法薬として不安を即効的に弱める抗不安薬(マイナートランキライザー)も併用するほうがよいようです。
薬物療法とあわせて精神療法も重要です。
パニックを起こしやすいライフスタイルを変えたり、不安との付き合い方を学ぶことでその後の再発を予防できるからです。
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